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健太君に手を引かれ、何とか部屋から出れば
顔に大きく『心配』の文字が浮き出ている山内君が掛けてきた。
「健太!アリスさん!…だい、じょうぶ…?
なんか途中ででかい音したから僕、心配で…。」
眉を下げ、壁に寄り掛かる健太君と
それに身体を預ける俺をわたわたしながら眺めているのを見るに──。
「おま…っ、気付かねえのかよ…コレ…。」
「ん?どれ?」
「……くっそ。」
ふふ、やっぱり健太君にしか俺の匂いはわからないんだ。
「あの人の目の前でぇ……セックス見せてあげれば諦めるかなって思って…薬、飲んでこなかったんだぁ…てへっ。」
フー、フーと呼吸を荒げて必死に我慢する健太君にそう笑えば、
興奮し切ったままの瞳が俺を睨む。
「……てめえ…ざ、けんなよ…薬は…?!」
「ん〜、健太君ちの鞄の中♡」
「ぁあくそっ。」
素というか、もう完全に暴走しかけている健太君の
普段よりも格段に悪い言葉遣いにゾクゾクする。
欲情した番同士のセックスでも見せれば店長もなす術がないって全部諦めてくれると思っての行動だったんだけど
思いの外健太君が強情で、歯でも欠けそうな勢いで唇を噛み締めて我慢してくれるモノだから
余計に…欲しくなっちゃった。
早く、健太君の獣のような瞳に俺を映して
気遣いも何もない
暴力的で動物的なセックスを
痛みなんて感じなくなるほど
強くて、優しさの欠片も無い
本能に従うセックスを
早く、ちょうだい。
体温が上昇するような感覚
どこまでも、健太君を求める。
これまで常に抑制剤を飲み続けていたお陰で、発情期とは名前ばかりのいつもとなんら変わりない生活をしてきた。
薬を切らしたり、飲まないなんて事なかったせいで
モロにこの感覚を味わうのは初めてに等しい。
やっばい。
こんなに立っているのもしんどいくらい目が回るんだ。
こんなに、俺の匂いでまともじゃいられなくなる健太君を見るのが堪らなく気分がいいんだ。
こんなに今すぐ
健太君の熱を感じたいと思っちゃうんだなあ。
「ん…けんたく、早く…っふが!」
そんな俺の可愛いおねだりは
豚の鳴き声みたいな間抜けな声と共に遮断されてしまう。
「…っ、山内…この人、俺の家まで送れ……。」
「え?いやお前の家なら一緒に帰ればーー」
「事故る、から……。早く、連れてって。」
「お……?おおう…。」
必死な健太君
可愛い。
大好きでたまんない。
俺の顔を無理やり押さえつけた手のひらに
舌を這わせた。
「…んた、覚えてろよ…あとで……っ。」
「なに、それぇ…お誘い?」
一緒に
本能に身を任せて
バカになってみよ?
山内君に連れられて、彼の車に乗れば
健太君が遠くなったからなのか
ほんの少し、身体が楽になった。
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