アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
部屋へ着き、鍵をかけて乱暴にベッドに落とす。
「さぁリシェ、話してもらおうか。
何故そのような格好をしている」
これまでの俺ならきっと頭ごなしに怒り散らすが、この前の喧嘩以降怒る前にひと呼吸置くことに努めている。
(まぁ、今回のは既に駄目だが)
ひと呼吸どころではない。怒りが治らずはらわたが煮えくり返りそうだ。
だが、一応言い訳だけは聞いてやろう。
余程怖いのか後ろめたさがあるのか、自分にかけられたマントを握り締めながらリシェが小さく震えている。
「声を、かけられたんです……っ」
『セグラドルのΩ様ですかな?』
ロカ様と歩いていたら、声をかけられた。
振り返ると民族服に身を包んだ男が2人。本日来ている外交団の一部だと分かった。
『我々は服を専門とする者です。つい先ほど謁見が終わり、少し城内を歩いておりました』
『そうですか。引き続き楽しまれてください』
『ありがとうございます。あの、Ω様は我々の国の服に興味はございますか?』
『服?』
『我々の国のΩは踊りが得意な者が多く、行事の時等はやや特徴的な服を着ています。本日はそれも持ってきているのですが、よろしければご試着されてみませんか?』
〝試着〟
(あぁ、もしするなら僕がしたほうがいいな)
まず自分が着て、それから王妃様が着たほうが安全だ。
チラリと視線を移すと、迷っている様子のロカ様。
国は違えど同じΩが着ているというのは興味があるし、中々来ない外交が持ってきてくれた珍しいもの。気持ちはすごく分かる。
見てみたいけど、さてどうしよう……
『とりあえず、何処か空いている部屋でご覧いただくのは如何でしょう』
『それからの判断でもよろしいかと思われますが……』
『うぅ…ん……リシェ……』
『そう、ですね……
では、私がまず見てから判断しましょうか。ロカ様も気になっているようですし、大丈夫そうでしたら着たままロカ様の元へ伺いますよ。それまでご自身の部屋で待っていてください』
『んん…なら、何処の部屋で試着するか教えて? 念のため兵士に声かけとくから。
あ、あの信用とかそういうんじゃないんですっ。ただ、本当に……』
『構いませんよ、番はいれどΩ様ですからね。
用心に越したことはございません』
『我々は嫌な気はしておりませんのでご心配なく。
寧ろこちらから声をかけたのです。お心遣いありがとうございます』
警戒されてるのが分かってるのに嫌な顔ひとつしない2人に少し安心し、ロカ様と空いている部屋の前で別れ
見せてもらった服に付いてる鈴の音がとても優雅で、思わず手に取ってみるとすごくいい肌触りで、セグラドルには無い綺麗な生地で
あれよあれよと言う間に着方を教えてもらい、試着させてもらっていた。
着替え終わって外交の者たちに見せると、興奮気味に全身鏡の前まで連れられて……
ーーそこで初めて、この事態の不味さを自覚した。
「い、急いで着替えようとしたのですが、思いの外服が僕と合っていたのか、なかなか離してもらえず……」
そして『どうせなら髪飾りも!』『化粧もしましょう!』と詰め寄られ、どうしようと思っていたところに俺が来た…と。
(まったく……)
我が番は、本当に己のこととなると点でダメだ。
自分にどれだけの魅力があり、どれだけの危うさを持っているかを分かってない。
前回のはまぁ良かったのかもしれない。リシェではなく純粋に城の庭に興味を持っていた者だった。
しかし今回は違う。恐らく、想像以上に服が似合ってしまったのだろう。
服を専門とする者のため、何か職人魂が疼いたのかもしれない。
だが、そんなものは知らん。
〝我が番にこのような端ない服を着せ、迫っていた〟
それだけで俺を怒らすには十分だ。
(そして、)
「ーーリシェ」
「っ、は、ぃ」
「今回のこれは、お前にも非があるぞ。
お前の危機管理能力の甘さが招いたことだ」
「わ、かって…います……申し訳、ございまs」
「謝って済むならとうの昔に済んでいる。
どうやらお前は、一度痛い目を見ないとわからないようだからな。〝仕置き〟だ。
俺以外の前でこんな姿を見せるとは……覚悟するといい」
「ーーっ、」
最早職務など何処かへ行ってしまった。それほどに今回の件は衝撃が大きい。
王妃様はこの服を着たリシェを待っているだろうが、気を遣って兵が事の詳細を伝えに行くだろう。
だから、もう心配ごとは何も無い。
冷たく見下ろした先
艶麗な服に身を包んだ愛しい顔が、クシャリと歪んだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
43 / 72