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「…ーェ、リシェ……リシェ!」
「っ!」
ハッと目を覚ますと、見慣れたベッドの上。
「あぁ、良かった……」
「アー、ヴィング…様……?」
僕の片手を握りながら、安心するように笑ってる。
あれ? 僕なにしてたんだっけ。
確かーー
「起きたかな?」
「っ、」
カーテンを開ける音と共に医師が顔を覗かせた。
「酷くうなされていたようだが大丈夫か?
アーヴィングも心配していたよ」
「気分はどうだリシェ?」
「ぜ、全然っ、なんともないです」
「ならいいが……
庭先で倒れてしまったらしいな。前も同じように訓練場へ来ようとしてたのか? 近くにいた者たちが気づいて良かった…」
「ーーぁ」
「一応運ばれてきた時に検査はしたけど、気がついたしもう一度しよう。起きれるかい?」
「は、ぃ」
握られていた手を引いて起き上がらせてくれる番に、半ば呆然と「ありがとうございます」と言いながら医師の後をついて行く。
(そうだ、僕は)
訓練場へ行こうとして、庭先で鋭く響く剣の音を聞いて、それにどうしようもなく体が震えて
蹲った僕に兵士が来てくれたけど、鎧の音にもっと怖くなってしまって
なにより、その腰に付けていたものがーー
「……? リシェ、大丈夫かい?」
「っ、ぁ、はい」
「まだぼうっとするかな? 身体には何の異常もないんだが、なにかあった?」
「…いいえ、なにも……」
「そうか。うぅん、このところ調子が良かったからね。少し頑張りすぎているのかもしれないな。
リハビリが終わって自由に歩けるようになったからといって、無理をしてはいけないよ。
まだ体力も万全ではないだろう。自分の歩ける量を調整しなさい」
「はい」
「顔色は…まだ戻らないままだね。
今日はこのまま部屋に帰りなさい。また何かあったら訪ねてくるといい」
「わかりました……ありがとう、ございます」
「今日は俺も仕事を上がる」と横抱きにされたまま部屋のベッドまで運ばれて。
「直ぐ戻るから」とバタリと扉を閉め、アーヴィング様は出ていった。
恐らく、仕事中慌てて来てくれたんだ。
やっと元気になったのにな、申し訳ない。
でも今は…それ以上にーー
そろりと床に足をつけ、これまで触ることのなかった棚へ向かう。
番が戻ってくる前に、確かめておきたいことがある。
アーヴィング様は、仕事以外で鎧をつけることはない。
だから僕がいた病室でも共に過ごすこの部屋でも、見る機会は無かった。
剣だってそう。腰から下げてるのを見たのは、いつが最後だっただろうか……
だから、全然気づかなかった。
「……っ」
どうしようもなく震える腕を叱咤して、ガチャリと扉を開ける。
あまり触らない方がいいだろうと、これまで開けてこなかったアーヴィング様の棚。
そこには、これまでの戦いや訓練で使われてきた鎧や剣の数々、そして幾つもの勲章が輝かしく飾られていて。
「ーーっ!」
突然息が詰まり、慌てて扉を閉める。
「っ、かは…は…はぁ……」
どくどくうるさい鼓動の音。
一気に早くなる血の流れ。
乱れる呼吸と、涙で滲む視界と
そして脳裏には、傷を負ったあの瞬間の映像ーー
「ひっ、ぅぐ」
……嗚呼、間違いない。
僕は
「ぅ、ふ、ぇ…はぁ……っ」
(こ、こわ…ぃ)
僕は、兵士が 鎧が
ーーーー剣が、怖いんだ。
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