アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
瓦礫の下で隠れているΩを発見。青ざめ、震えている。
『Ω保護チームです。あなたのIDナンバーは?』
『…………jm152pwd836』
『よくご無事で。あなたの性と身元が確認されました。今後、あなたの人権は守られます』
『保護……?』
『はい。当施設で暮らして頂く事が可能です。食事、衣服住の心配はなくなります。Ωが安心して暮らせる保護施設で、豊かな生活を送れる事をお約束しましょう』
俺はそれを他人事のように見ていた。
胡散くさい言葉だな……そう思いながら。
実際の保護シーンを政府はニュースで発表。安全性が高い事をアピールした。
『可能です』なんて言いながら、保護という名の強制収容。これ以上の混乱と絶滅を避ける為、政府はΩの保護に乗り出した。
保護されたΩの数は予想以上に少なく、過度監視と期待がかかる。振りかかるプレッシャー。元々ストレスに弱いΩはさらに激減した。
「保護されたΩとマッチングすると、一生遊んで暮らせるって本当かな。仕事しなくても金が入ってくるとか、最高」
職場の同僚が言ってくる。
Ωが保護されると、検査に応じ適合したαは、その施設に集められる。余計な争いが起こらないよう、遺伝子レベルを元に選定された。
Ωは適合したαの中から相手を選ぶ事もできる。お見合いのように一人ずつ、試す事も可能。合わないと感じたら交換も可。
特に希望がなければ、より数値が高い者から順に同室を許される。
「さぁ……施設にいる間だけじゃねぇの?」
「だって、待機中も大金貰えるらしいじゃん。っていうか、誰でもいいからヤリてぇ」
「…………仕事しろ」
呆れてものが言えない。
だが、一般社会にはほぼαしかいない。
発散できない欲。世の中のαは欲を持て余していた。
「営業のエースは遺伝子検査を拒否したんだって」
お喋りな同僚は話を続ける。
「ふーん」
「多分、囲っているΩがいるんだよ。俺も一回位、ヤラしてくんねぇかな」
「…………でも、それが本当なら狙われるだけだから、お前もあまり憶測でものを言うなよ。そろそろ働け」
「はいはい。チェイスは優しいねぇ」
Ωは自由に仕事をしたり、外出する事すら難しくなっていた。
答えずにパソコンに向き合う。無言でキーボードを叩いた。
ある日、突然、職員が家に来た。
「適合者が見つかりました。あなたの意思をお聞かせください」
通知を受ける事ができるのはほんの一握りだと聞いていたから、正直、驚いた。
俺にマッチングする子がいる……
「選択権はΩにあります。時期がくるまで、施設で過ごしてもらいます」
適合するαの数は一人ではない事が多い。αが数名いれば、当然揉める。
Ωを守る為、αは施錠された部屋に閉じ込められ、窓もない部屋で監視されると言う。
まるで囚人のような扱いだ。
しかしながら、適合しただけでαには莫大な補助金が下り、衣食住は保証される。金額はそれこそ、遊んで暮らせる程。
このご時世、一流企業に勤めていても、エリートのαですら職を失い、経済も貧困になっている状況。
仕事を続行するかは自由。求職中や休む場合には手厚い補償もあり、受け入れるαがほとんどだった。
迷ったが、俺は一時休業を選び、その施設へと足を踏み入れた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 11