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ルーザーの為に必死に練習してきたルーク。
最初から奴にベタ惚れ。俺の事なんて全然、眼中にない。
自分の気持ちを認めたくなかった。
回数を重ねる度、ルークが可愛くて――
…………誰かを愛しいなんて、初めて思ったんだ。
クソ……
今更、自分の気持ちに気が付くなんて。
ルークが好きだ。
どうすんだよ……
やめなければ――
そう思いつつ、俺は関係を繰り返した。
これで最後。毎回、思うのに、やめられない。
抱き合うと幸せで……
愛しい気持ちが溢れて……
ある日、ルーザーと笑顔で話しているルークを見かけた。
湧き上がる嫉妬心。
――でも、同時に思い出す。
自分はあいつの代わり。提案を受け入れたのは自分。
何を勘違いしていたんだ。
「ありがとう。気持ち良かった……チェイスのお陰……!」
「おぅ。良かったな。もう、そろそろいいんじゃない?」
――――俺もこれ以上は駄目かもしれない。
「え?」
「ルーザーとしたくて頑張ってたんだろ。そろそろ告白してみたら?」
「……うん。そうだね」
早く手放さないと。
今なら、まだ傷は浅くて済む。
『あんな奴やめて、俺のものになれよ』
喉まで出かかった言葉を飲み込む。
「今までありがとう……」
話している最中に、職員が数名飛び込んできた。
「チェイス! 君の血液から抗体を作れるかもしれない!!」
どうやら最初の血液検査で採取した血液を調べていくうちに、有害物質を無効化する細胞だか成分が含まれている事を発見したらしい。
純粋なαではないのに生き残った理由はそれだと説明を受けた。
「もしルークと上手くいかなくても、この施設に残って欲しい! 世界中の人を助けるきっかけになるかもしれないんだ!」
「きっと世紀の発見になる……!」
「それに希少な血液の持ち主だからチェイスの方も遺伝子に合うΩの子を募集できるかも!」
興奮気味の職員達。
……イレギュラーな体質で生き残ったのには意味があったのか。
「俺、外に出ていますね……」
ルークが立ち上がった。
まさか今からルーザーの所に行くのか?
ルークはすれてなくて人懐こい。あんなに可愛くて、やらしいんだ。迫られたりしたら、あの堅物男だって――
想像しただけで吐き気が出る。
涙目も可愛い声も俺しか知らなかったのに。
「ルーク」
俺の声にルークが振り向く。
「何……?」
…………ルーザーの事、本気で好きなのか。
相手にされていないって分かっているんだろ。
「頑張れよ。上手く行くといいな」
出てきたのは本心とは真逆の言葉。
ルークが部屋から出ていき、職員の話なんて一つも頭に入ってこない。
ルークが好きだ。
行かせたくない……!
このまま想いも伝えずに、手放すのか……?
「血液の話はまた今度にしてください!」
話を遮り、勢いよく立ち上がる。
ルーザーの研究室まで走ると、部屋の前にルークがいた。
ルーザーと何かを話している。
「ルーク!!」
駆け寄って、腕を掴んだ。
「……チェイス」
驚いた顔をしたルークと目が合う。
「……俺じゃ駄目か?」
「え……」
戸惑うルークを引き寄せて抱きしめた。
「大事にする」
「チェイス……」
ルークは震えている気がした。
「お前が好きなんだ。ルーザーの所に行かないでくれ」
――――長い沈黙だった。
ルークは一言も答えない。
意を決して顔を見たら、ルークは大泣きしていた。
「ど、どうしたんだよ!」
「…………今の……っ。本当……?」
ルークが泣きながら俺を見つめた。
「本当だよ」
「……う……嘘だ……!」
「嘘?」
「チェイスは! いつも涼しい顔を……していて俺の事なんか……! 俺を……抱いている時でさえも……」
早口でまくし立てられる。
涼しい顔……?
「…………顔に出さないようにしていただけ。嫉妬しているなんて知られたくなかった」
俺の言葉にルークの顔が真っ赤になる。
「本当に……? 俺の……ど、どこが……」
「お前は可愛いよ……」
そう答えると、ルーザーがわざとらしい溜息をついた。
「イチャつくなら、部屋でやってくれ。胸焼けがする。あと、何を勘違いしているか、知らないが……最近、ルークの口からは『チェイスが――』『チェイスは――』お前の話しかしてないぞ? さっさとくっつけ。面倒くせぇから」
ルーザーは手をひらひらと振り、部屋に戻っていった。
「……ルーク」
信じられなくて呆然と見つめる。
「だって言えないよ! 優しくされて好きになっちゃったとか、抱きしめられたらドキドキして、エッチの時、幸せを感じたとか……」
ルークの目に涙が溜まる。
「…………俺の片思いだと思っていた。言わなければ、ずっと一緒にいられる――それなのに、ルーザーに告白しろとか言うから、俺……」
涙が零れ落ちる。
俺の腕の中で泣くルークを抱きしめた。
「お前が好きだ」
今まで言えなかった言葉。
もう一度伝えて、キスを交わす。
流れるルークの涙をそっと拭った。
「俺も……」
泣きながら、ルークも言ってくれた。
「俺もチェイスが好き……今日は練習じゃなくて、本気の……して……?」
嬉しい告白と大胆な誘い。
その場で押し倒しそうになるのを我慢し、部屋に連れて帰った。
――――この世は世紀末。
誰かと想いを通じ合わせる事は難しい。
でも、俺とルークは同じ気持ちで、ここにいる。
「ルーク……」
「大好き……チェイス……」
抱き合うだけで感じる幸せ。
繋いだ手から……
触れ合っている唇から伝わる。
運命……
そんなものは信じていなかった。
でも、今は――
(the end)
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