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緑間の思いとプレゼント
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【緑高】
⚫︎12月25日に妊娠属性機を使用。
〜12月24日 夜〜
自室の静かな書斎で緑間は頭を悩ませていた。
和成にちゃんと、2人の子供が欲しいと言って妊娠属性機を使用するべきか…。
それとも……。
正直に言えば『男で妊娠とかマジウケるーw真ちゃんが欲しいなら試してみる〜?www』と半分ふざけて言う可能性が高い…。
けれど、万が一拒絶されたら…?
俺は正気を保っていられる自信がない。
やはり……
先に既成事実を作ってしまうしかないだろう……。
アンティーク仕様の、木製のディスクの引き出しをそっと開け、中を確認する。
そこには、手の平サイズの美しくラッピングされた赤い小箱と、家の写真が掲載されたカタログが数冊納められていた。
…準備はすでに整えてあるのだよ…。
後は、和成の妊娠が確定した時点で、これを渡して……。
『真ちゃーん!パーティの準備できたぜー?』
ドア越しに声をかけられ、ハッ!っと息を飲む。
急いで引き出しの扉を閉めて「…今行くのだよ。」と冷静に返事を返した。
リビングに向かえば、テーブルの上には2人では食べきれないであろう量のご馳走が並べてある。
「…今日は随分と豪華だな。」
「そりゃー今日はクリスマスイヴだし!なんたって、真ちゃんが家にいるんだもん、俺だって張り切っちゃうっしょ!」
優秀な医者である緑間に、祝日や皆が浮かれるイベント日など、あって無いようなものだ。
宿直に当たる日もあれば、急患で無理矢理呼び出される事もある。
そのせいで、2人は過去2年間、クリスマスを一緒に過ごせていなかった。
「……すまないのだよ。」
少し視線を落とす緑間の表情から、何が言いたいのか察した高尾は、大きな身体にギュっと抱きついた。
「…違うって、真ちゃん!去年と一昨年の事は怒ってねーから。俺は、今年、真ちゃんと一緒にいられるのが嬉しいだけなの!」
「……和成…。」
胸元にグリグリと顔を押し付けてくる、艶やかな黒髪を撫でてやれば、高尾は嬉しそうに顔を綻ばせた。
「さ、飯冷めちまうから、食おうぜ!今回のチキンステーキは自信作なんだ。しかも、真ちゃんの好きな照り焼き味だぜ!」
「それは楽しみなのだよ。」
相槌を打てば「ほら、座って、座って。」と腕を引かれてソファーの前まで連れてこられた。
席に腰を下ろすと同時に、シャンパングラスを持たされて、並々と酒を注がれる。
薄いグラスの中で、ゴールドに輝く小さな粒がキラキラと輝きを増す。
「…じゃ、真ちゃん!」
隣に座る高尾がこちらを向いて、グラスを傾け、微笑む。
「メリークリスマス!!」
「メリークリスマス。」
カチン、と小さな音を立ててグラスを合わせた後、同時にシャンパンを飲み干した。
「…っ〜あ〜!!うっまー!!」
「…行儀が悪いのだよ。」
「いーじゃん、別に。俺と真ちゃんしか居ないんだもん!」
ぷぅ、と頬を膨らませても、甘えた声色で、本気で拗ねている訳ではないのだと分かる。
「…全く、仕方のない奴なのだよ。」
呆れながらも許せてしまうのは、やはり惚れた弱みというやつだろう。
和成の顔を見つめていると、酒のせいか、少し頬が赤い。
「…俺さ、真ちゃんに渡す物があるんだ。」
そう言うと、高尾はズボンの後ろポケットから黒い小箱を取り出した。
「…はい、クリスマスプレゼント!」
緑間は差し出された箱をそっと受け取り、シュルリとオレンジのリボンをほどくと、手から少しはみ出る箱の蓋を開けた。
その中には、艶やかな黒い光沢を放つペンが、赤い布にそっと身を横たえていた。
「……万年筆…。」
「…そっ、万年筆。…この間さ、真ちゃんの白衣洗おうと思ったら、ポケットの中に万年筆が入っててさ…。そのペンのキャップに付いてるフックが折れてたから…。」
高尾がスッと箱に手を伸ばして、ペンを取り、緑間の胸元へと指を伸ばす。
「…真ちゃん、仕事でいつも万年筆使ってるだろ?だから、無いと不便かなと思ってさ。」
きちんとボタンの掛けられた、シャツの胸ポケットに万年筆を入れ、キャップのフックで布を挟んで固定した。
ポケットから、艶りと黒く輝く万年筆がアクセントになって、緑間の顔をより美しく引き立てている。
「…やっぱ、緑間センセーはこうじゃねーとな!」
「…和成…。お前は、よく気がきくのだよ…。」
俺は神経質なせいか、決まった場所に決まった物が無いと落ち着かない。
壊れた万年筆もそのうちのひとつだった。
あのペンは白衣の胸ポケットに入れて、必ず持ち歩いていたのだか、急患が入った際に、看護師とぶつかり、フックが壊れてしまったのだ。
また買わなければ…と思いながらも買いに行く時間が無くて、結局壊れた万年筆は、白衣のポケットに仕舞われたままになっていた。
和成が言葉に出す事はないが、俺の性格を知っていて、あえてプレゼントに万年筆を選んだのだろう。
しかも、箱に印字されているメーカー名から、俺が愛用している老舗の物だと分かる。
(……お前以上に、俺を知り尽くしている奴はいないのだよ…。)
(……やはり、俺の子を生むのは、和成しかいない…。)
「……この万年筆は、大切に使わせてもらうのだよ。」
「…へへっ。…ちゃんと使ってな!」
ニッ!と笑う顔に手を添えて、徐に唇を近づけると『ちゅ』と触れるだけのキスを贈った。
すると、一瞬固まっていた高尾の顔がみるみる真っ赤に染まる。
「な!なっ!?真ちゃん!!?」
「…何故、逃げるのだよ…?」
「…だって!…真ちゃんが行きなりキスするから!!」
「…キスぐらい、しているだろう?」
「だって!いつも…エ、エッチの時しか…真ちゃんからしないじゃん!」
トマトのような顔で怒鳴られて、はて?と考えを巡らせれば、確かにセックスの時以外は、あまり自分からした事が無いと気づく。
普段は和成から求めてくるので、今まで気に止めていなかった。
「……これからは、俺もしたい時にするのだよ。」
「……っ〜〜!!」
高尾は顔を両手で抑えたまま、ソファーに倒れ混んで疼くまった。
「……真ちゃん、最近デレ過ぎ!…ツンは何処行ったの…!?和成、心臓が持たないんですけどぉっ…!!」
湯気が出そうな程に、プルプルと真っ赤な身体を揺らして縮まる背中に、腕を回して撫でてやる。
「…慣れるのだよ。」
「ムリムリ〜〜!!」
俺の嫁になるからには、今まで以上に大切にし、甘やかす予定なのに、これぐらいで根を上げてどうする。
と、心の中で叱咤する。
なかなか落ち着かない高尾を見兼ねて、緑間は話題を変えようと口を開く。
「…俺も、和成にプレゼントがあるのだよ。」
プレゼント、の言葉に、高尾の両手が顔から外された。
「…少し、待っていろ。」そういい残すと、一旦リビングを立ち、2.3分後にまた戻ってきた。
帰ってきた緑間の手には、彼の胸部を隠す程の大きな箱が抱えられていた。
「……何それ、デカくね…?」
落ち着つきを取り戻した高尾が、不安げに声をもらしたが、ソファーに腰を下ろした緑間が、高尾に箱を差し出す。
「…俺からのプレゼントだ。受け取れ。」
「…あ、ありがとう。」
予想外な展開に弱々しい返事をしながらも、プレゼントを受け取り、ガサガサとラッピングの紙を破いて行くと、大きな猫目がキラキラと輝き出した。
「……これって…。」
ラッピングを取り去り、箱が姿を表すと、嬉しさを抑えきれない!とばかりに声を上げる。
「最近、話題になってるqsq4じゃねーかっ!!」
「…欲しがっていただろう?」
「そう!スッゲー欲しかったんだよ!これ!!」
少し前にゲーム雑誌を見ていた高尾が『うっわ〜、これ欲し〜!』と呟いていたのをさり気なく聞いて覚えていて、緑間はクリスマスのプレゼントにしようと、考えていたのだ。
「……あれ?…でも、qsq4の発売日って、来年じゃなかったっけ…??」
「……来年の1月10日に発売日だ。」
「……?…じゃあ、何でここにあんの…??」
眼鏡のブリッジをカシャリと押し上げると、簡単に事情を説明する。
「…俺が担当している患者に、ゲーム関係の仕事をしている奴がいるのだよ。ちょっとしたきっかけで、話すようになってな。…そのゲーム機が欲しいといったら、早めに売ってくれたのだ。」
「マジで!?じゃあ、これまだ発売してないって事じゃん!スッゲー!!」
箱を天井に掲げて、子供のようにはしゃぐ恋人を見て、綺麗な顔に薄っすらと笑みが浮かぶ。
「…お前は、食い物や装飾品よりも、それの方が喜ぶと思ったのだよ。」
「さすが、真ちゃん!俺の事分かってらっしゃる!」
「…当然なのだよ。」
照れを隠すように、再び眼鏡を押し上げると、ニヤニヤした顔が近いてきて、肩を寄せる。
「あれれ?真ちゃん照れてるの?耳赤い〜!」
「うるさいのだよ!」
「はは!怒んなって!…いや、マジで俺嬉しいよ。わざわざ販売前に買ってきてくれたんだろ?ありがとな、真ちゃん。」
薄っすらと赤く染まる頬に『ちゅ』と口付けて「後で一緒に遊ぼーな!」と一言添えてやれば…
「…フン。…遊んでやらない事もないのだよ。」と返事が返ってきた。
「…やっぱり真ちゃんは、こうじゃねーと!」と笑いながら、緑間のツンデレに安心した高尾は料理を取り分けはじめる。
その後、2人でゆったりと、たわいも無い話をしながら料理を食べ、口論しながらゲームで対戦をし、まったりと酒のグラスを傾けた。
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