アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2.
-
部屋の明るさに、ふと目を開けた。
日差しの明るさとは裏腹に、気分は優れず、頭も重い。
とはいえ、それ如きで仕事を休める筈もなく。
億劫ながらも地に足をつけ、よたよたと部屋から出た先。
「おっと、」
「ッ、」
偶然にも、黒澤とぶつかる。
咄嗟に俺を受け止める黒澤の体は俺よりも大きく、俺はすっぽりと囲い込まれた。
「ぁ、」
頑なに拒み続けた、その体温。
それは、否定のしようがないほど体温に、心に、体の端々にまでなじんで、とけていく。
ぞわぞわと背筋に走る快感と、頭の真ん中を埋め尽くす至福感。
世界で唯一、完全に守られていると実感できる温もり。
本能で焦がれ続けたそれを突然与えられ、身体の制御を失った。
「っ、紘!?」
かくん、と足から力が抜け。
抱き寄せる腕の強さに、くぅ、と喉がなる。
優しく頬に添えられたてのひら。
それが優しく表皮をなぞる度、不調も不快感も消え失せて、深い快感に呑まれてしまう。
「……やっぱり、君、相当無理をしていたな。もう限界だ。こっちにおいで」
何を言われているかの判別もつかず、ただ頬に添えられた手に頬をすりよせる。
全てがどこか遠く。
目の前の男がここにいて、自分はその腕の中にいる、その事実以外は全て些末なことに思える。
「僕が連絡しておくから、今日は全部休んでくれ。…いいな?」
間近での囁きに、耳にかかる吐息。鼓膜を揺らす、穏やかで低い、落ち着く声。
そんなちいさなことがおおきくて、体があつくてしかたない。
ひとりで苦しかった夜よりもずっとあついのに、苦しくも悲しくも、つらくもない。
ぼうっと呆けていれば、覗き込むように視線を合わされ、それにすら背筋が震えた。
ぜんぶ、ぜんぶ。
――――この男が与えてくれるものぜんぶが、きもちいい。
「……辛かったね」
当たり前のように与えられる、柔らかな労り。
それが与える快感は絶大で、ぴんと背筋が反って、足の指先が丸まる。
「っ、ぁ??」
未経験のそれに目を白黒させていれば、その胸元にそっと頭を抱え込まれる。
「大丈夫だ。全部ゆだねて、力を抜いてごらん。何も怖くないよ。どんなことからも、誰からも僕が守るから」
その言葉が嘘ではないと、本能が知っている。
なにか、考えるべきことがあるような気がして、けれど丁寧に紐解かれた本能は、理性の介入を許しはしない。
自覚もないまま伸ばした腕が、すがるように男の背に回る。
そうしてより密着すれば、馨しい香りが、嗅覚を占める。
焼ききれるような灼熱。
呑まれてしまう。
記憶も、感傷も、何もかも。
その強烈な感触を最後に、意識はホワイトアウトした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 18