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体温なんて知りたくなかった
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ぐっと体を押えられて、そのまま熱い塊が中へと入ってくる。
苦しい。
何が起こっているのかよく分からないまま、必死に彰さんにしがみつく。苦しいはずなのに、それが入ってくることで、体中が歓喜に沸き立つように震える。
彰さんだ。彰さんが、中にいる……!
ぶわっと体が興奮に熱くなり、今まで感じなかった甘い香りが溢れてくる。αの発情時の香り……?
彰さんが、発情している!
「彰さんっ、あぁっ!」
俺で、彰さんが発情している。俺はβで、彰さんには番がいる。でも、そんな俺に、彰さんは発情しているんだ!
「ミツカ」
優しい声で彰さんは言うと、押し込んだ性器で俺の中を強くえぐる。ぐちゃぐちゃといやらしい水音が響いて、気持ち良さと嬉しさで頭が真っ白になる。
「好きですっ、ずっと、ずっと。彰さん。俺、あなたのことが、ずっとっ」
今なら言っても良い気がした。違う。今しか言えない気がした。
絶対に手の届かない人だった。
βは一人では生きていかれないこの世界の中で、αに恋をするなんて許されないはずだった。
でも、例えこれが実験で、一時のことなのだとしても。
彰さんには番がいて、俺とのことなんてすぐに忘れるのだとしても。
「あぁ。知っていたよ、ミツカ。君の気持ちはずっと分かっていた」
「ほんと?」
「あぁ。いい子だ。ずっと待たせてしまったね」
「……彰さん。俺、いい子に待てた?」
「あぁ。待たせたね。もう待つ必要はない。存分に乱れなさい」
「う、んぅっ」
奥を強く突かれて、体が大きく跳ねる。もう何も考えられなくて、中をえぐられるたびに襲う快感に、何度も俺の性器は震えて射精を繰り返している。
それでも一向にこの快感が収まる気配はない。
でも、それでも構わなかった。
どれだけはしたない姿を見せても、彰さんは許してくれる。だから構わない。
あぁ、幸せだ。
ぎゅっと中にいる彰さんを絞めつけて、俺はうっそりと微笑んだ。
このまま、二人きりで。そう、世界が滅びてしまえばいいのに!
「あぁ、気持ちいね、ミツカ」
にっこりと笑った彰さんは、そんな笑顔に見とれている俺を抱き上げると、俺の顔を白い枕に押し付けた。
なぜ?顔を見たくない?一瞬で胸に広がる悲しみは、訪れた首の痛みにかき消された。
「い、あぁああっ!」
深く深く、今までよりずっと深く、彰さんが俺の中にいる。中で熱い液体が広がる感覚と、焼けるような首筋の熱さ。
その全てを受け止めることなど到底俺にはできなくて、いやいやをするように暴れる。彰さんはその間も、強く強く俺の首筋を噛み続けている。
発情した匂いの中に、血の臭いが混ざる。
ようやく俺の首筋から口を離した彰さんの唇には、うっすらと血がついていた。
……噛まれた?
「彰さん……ねぇ、あの」
彰さんはαだ。だから、セックスに夢中になって、Ωにするように俺のうなじを噛んでしまった?
でも、俺はβだから、噛まれたところでその行為に意味はないはずだ。
「ミツカ、よく聞いてほしい。君への投薬実験は無事に成功した。君は先ほどΩになり、初めての発情期を迎えた。そして私を受け入れたわけだが、気分はどうだ?」
何を、言っているんだ?
投薬実験?俺が、Ωになった?
「まだ体が変わって初めての発情期だ。受精はできないだろうが、これから続けていけば、君も子どもを産めるようになるだろう」
まだ中に彰さんが入ったまま、急に研究者の顔に戻ってその言葉を告げられた。
熱がサァっと冷めるのを感じる。
そうだ。これは実験なんだ。
「彰さんは、俺が彰さんのことを好きだって分かってたから、セックスしてくれたの?」
Ωになったのならば、αとセックスしなくてはいけない。αとセックスして、たくさん子どもを産む。それが、Ωの役目。
きっと俺はこれから、たくさんのαとセックスしなくてはいけないんだ。でも、彰さんはそんな俺を少しでも憐れんでくれたのだろうか。
だから、せめて最初だけは好きな相手とさせてやろう。そう思ったのだろうか。
「まぁ、それもあるが……」
彰さんの困ったような声に、耐え切れなかった涙が零れた。
馬鹿みたいだ。
彰さんが俺に発情していることに有頂天になって、少しでも好かれていると勘違いした。
綺麗なΩの番が彰さんにはいるのに、その人に勝てるのではないかと思ってしまった。
だって、ずっと俺は欲しかったんだ!
高い塀に囲まれた箱庭。優しい世界はすべてがどこか作り物臭くて。そんな中で、この人だけが唯一本物だと思った。
当たり前だ。この人はαなのだから。一人でも生きることができる、強い人なのだから。俺達βが憧れるのは当然なのだ。
でも、そんな彰さんの側にいれば、少しでも触れ合うことができれば。
こんな作り物の世界の中でも、俺は息ができると思った。
「酷い。酷いよ……こんなの、もう嫌だ」
αとΩしか生きていかれない世界だというのなら、なぜαはβを生かすのだろうか。βは実験に必要だと言うのなら、感情のない人形にすれば良かったのに。
彰さんに、俺は相応しくない。
こうしてセックスしてくれても、笑顔を見せてくれても、優しく抱きしめられたって、それは全部本物の感情じゃない。
苦しい。苦しくてたまらない。
どうしてこんな感情があるんだろう。俺はただ、彰さんの人形になれればいいと思ったはずなのに。
苦しい。もう嫌だ。
こんなに苦しいのならば、彰さんの体温など知りたくなかった!
俺は、大好きだったはずの彰さんを思い切り突き飛ばした。
奥深くに入っていた彰さんが抜ける感覚に、そのあまりの空虚さに、ただただ体を震わせる。でもいいんだ。例え体だけ満たされても、そんなものは嘘でしかなかったのだから。
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