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2日目
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「…いらっしゃいませ」
1日空いて2日目
犬が来た
「……えっと、一昨日…?はごめんね」
しょぼくれた顔で俯きがちに覗き込んでくる
「覚えてましたか」
「うん…なんて言ったか覚えてないけど……
気を取られた隙に失礼なこと言った……よね?」
覚えてないのかよ
「……ええまぁ
でも気にしてないですから
席こちらどうぞ。
マスター1名様です」
「…はい。
……あ、あの俺蒼葉って言うんだけど……」
「あぁ、名前なら霧さんから聞きましたよ」
「…そっか
……新人さんは名前…」
「俺…?
……俺は…エンです」
あ、しまった苗字の方言えばよかった
「えん?
ハーフかなんかかい?」
「いや純日本人だと思います」
「ふーん。
改めて嫌な思いさせてごめんなさい。
これからはもっとちゃんと気をつけて飲むから…」
しつこいくらい申し訳なさそうで今日ずっとこのままかと考えるとうんざりする
「大丈夫だって言ってるじゃないですか」
「…うんでも
許す、とは言ってないだろう」
やっぱ犬なのかもしれない
動物的な勘なのか
「……気にしなくていいですよ
そんなこと。」
「…そっか」
「ご注文お決まりですか」
「…えっと、烏龍茶とユッケとオムライス」
変な組み合わせ。
「はい。
只今お持ちしますんで少々お待ちください」
「はーい」
…やっぱこの人犬みたいだな
無駄に顔整ってなきゃ可愛かっただろうに
パグみたいな感じで。
注文を伝えてウーロン茶をもってく
「お待たせしました」
「ありがと
…変な組み合わせだと思った?」
「好みは人それぞれなんで特には。」
あーこれめっちゃ嘘
さっき思ってたわ
「君まだここのオムライス食べたことないでしょ
めちゃくちゃ美味しいんだよ
今度まかないで出してもらいなよ」
「はぁ」
「あのさ、怒らないで欲しいんだけど」
「はい?」
「それ、さ…リスカかい?」
「またですか」
なんだか少しガッカリする
興味本位で人の傷口に塩を塗ったくる陽キャは昔から嫌いだった。
死ねばいいのに
「いや、あの嫌なら答えなくていいんだ
ただその…興味本位とか物珍しさとかじゃなくて……」
「体を大事にしろとか言う気ですか?」
「え?言わないよ」
説教臭いバカバカしいことを言うつもりかと思ってたから思わず面食らう
「へ、あ、そう…ですか
……リスカ、すけどなにか」
「ん、深いなぁと思って
死にたかったの?」
結露で濡れたグラスの表面に触れながらじっと見られる
「…そう
……すね」
「そっかぁ
ごめんね君にばっか喋らせて
俺もさ、そういう癖あって」
そう言ってワイシャツのボタンを外して肌蹴させるとたくさんの傷跡がある
よく見ると袖口からも赤みを帯びた筋が何本もついていた
「痛そう」
「うぁっ?」
「あ、すみません急に触って」
「い、いや大丈夫
……俺もあの日君のその傷に触れてみたくて、思わず声掛けちゃったんだ」
「……へぇ
いいですよ
触りますか?」
「えっ、で…でもお店……」
「今他にお客居ないんで。」
「そ、そっか……えっと、じゃあ」
「…擽ったいっすね」
「ごめん」
「いや、別に俺は急に触っちゃったし」
「そっか。
俺触って痛くないかい?」
「大丈夫です」
「ガッタガタだ
血の匂いがする。
傷開いちゃったかな
あぁ…まだふさがってなかったのか」
「手に血着くんでそろそろ」
「ダメ?」
「…別に」
「俺傷とか血とかがなんか好きなんだよね
特にこういう血が沢山出る傷は傷口の周りの皮膚も変色するしすごく綺麗なんだ」
「変態なんすね」
「…そうかな
……そうかも」
苦笑いしながら認める
「気を取られたって言ってたのは俺の傷に?」
「だって、綺麗だったんだ
これが欲しいって思っちゃった」
うっとりとした目でキラキラと光を反射する血の溜まった傷口を見つめられる
「へぇ」
「ごめんね
変なこと言っちゃって
昴んとこ戻ってあげて」
「…そうっすね」
変な男
目が、怖いんだよなあの人
ギラギラしてて
「あ、ちゃんと謝ってた?蒼葉」
「はい
まぁ謝られました」
「ごめんねー
あいつアホだけど人を傷つけたりするのじつは苦手なタイプだから家帰ってから後悔して泣いたと思う」
「えっ、なんか
それはそれで嫌っすね」
「俺も思うー」
店長ゆるいなー
「じゃあ、また話しかけられると思うけど相手してやって
今日青葉以外来ないし
じゃこれ持ってって。」
青葉のお世話係って感じ。
なんで俺が…
「…ユッケとオムライス」
「そそ。よろしく」
「お待たせしました
ユッケとオムライスになります」
「やった
ねぇ一口食べてみる?
美味しいよ」
目がキラキラしてる
「いや、でも…」
「昴にお世話まかされたんでしょう
俺の!」
なんでこの人胸張ってそんなこと言えるんだ
「……まぁ」
「はいあーん」
「?ぅ
あ…ぁ?」
あーんってどうやるんだっけ
「……ぁ、な、なんか破廉恥だ」
「は?」
「だって君俺の目じっと見つめながら口開けたじゃん」
「……?
それがなにか」
何が間違ってると言うんだ
「なんか破廉恥だ」
「じゃあ目でも瞑っときゃ良かったんですか」
「!
それでいこう
はい、あーん」
「……ぁー」
「ダメだ……」
すぐ側にオムライスの気配がするのに食べられない
「は?
オムライスくれないんすか
くれるって言ったのに」
「……なんで普通のあーんが出来ないの」
「思ったんすけど、あーんする必要ありますか?
これ、スプーン借りて俺が普通に食えばいいんじゃ……」
「………そ、それだ」
「……じゃあ1口いただきます」
「うまい?」
とろとろの卵とバターの香りのチキンライス
控えめに言って死ぬほどうまい
なんだこれほんとにオムライスか?
「美味しいです」
「だろう!」
「なんで蒼葉さんがドヤ顔なんすか」
「美味しいって教えてあげたから」
「意味不」
「にしても君ってなんか変わってるよね
変?変って言うかなんと言うか」
「貶されてるのか」
「違うよ
変なやつ〜!じゃなくて
なんか変わってる不思議!って感じでさ」
何が違うのか全く分からない
「はぁ。」
「酔ってる訳でもないのに目座ってるし」
「やっぱ貶されてんじゃん」
「そんなことないよ」
「あ、ふと気になったんすけど」
「ん?」
「なんで君って呼ぶんすか
さっき俺名乗ったのに」
「だってなんか呼んで欲しく無さそうだったから」
「……....へぇ」
恐ろしく勘がいい
こいつ野生で生まれ育ったんだろうか
「あれ?間違ってた?」
「いや、あってますよ
じゃあ改めて名乗りますね
俺は藤々木です
トトでもトキでもまぁ好きなように呼んでください
下の名前程嫌じゃないんで」
「トキがなんかしっくり来た」
満面の笑み
八重歯が見えた
「じゃあそれで。」
「トキくん俺と仲良くしてよ」
「仲良く…」
「だめ?」
「あぁ俺金ないんで弱み握られても出るもんないですよ」
「酷いな!
別にそんなの狙ってないよ!
それなら金は俺が出すから!」
「援助交際ってやつですか?」
うわ。こわ。
「ちーがーう!!!
普通に友達になろって言ってんの
遊び行ったりしたいなって!!」
「…え、なんの得があって俺と友達になるんすか」
「楽しそうだからに決まってるだろ」
「………楽しそう?
俺みたいな根暗と飲むのが………………?」
正直俺みたいなのがもう一人いたとしても俺は絶対一緒には飲みたくない
「なんでそうネガティブなのかな
俺みたいに生きなよ」
「嫌です」
「もう!
ね、とにかくさ
俺トキくんと友達になりたいんだよ
いいだろ?
疲れたら帰っていいし金は俺が出すし車あるからドライブだって好きなところに連れて行けるよ」
「……水族館ならいいっすよ」
「…水族館」
面食らった顔でオウム返しする
「クラゲ見たいんで」
「くらげ」
理解しているかもあやふやな声
「はい。」
「わ、わかった
じゃあいこう明日行こう」
明日は休み。
だけどわざわざ休みに外出
でも出勤前もだるい
「………………はい」
「あ、今俺と休日に過ごす面倒くささとクラゲを天秤にかけたでしょう」
「よく分かりましたね
まぁ休日って言っても一日おきに休み貰ってるし別に大変じゃないからいいですよ
俺自分から外に出たりしないんで」
「やった!!」
「あ、でも」
「…な、なに……?やっぱりダメとかは無しだよ」
「今日は?」
「え?」
「店終わったあと」
「え?一緒に飲む?」
「いや、ドライブがいい」
「え、いいよ
よかった烏龍茶で」
「…じゃあ楽しみにしてるんで。
それじゃ。」
久々に星が見たい
昔家族と行ったことがある
「…ぅ、うん」
星が見たい。
たったそれだけで眠れるような気がした
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