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おまちかね
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「いただきます」
無意識にちゃんとそれが言えるのは律儀な性格故だろう
ふーふーと息を吹きかけて冷ますのが子供みたいで微笑ましい
「いただきます」
「熱っ」
待ちきれずに口に入れたもののまだ冷めていなかった様で不意打ちを食らったような顔をしている
彼は意外と表情が豊かだ
感情も
「大丈夫かい?」
「…口の中が焦熱地獄」
「少し崩して冷ましておいた方が良いかもしれないね」
「冷めるまで待つのが辛い…」
「ほら、その間グラスの中のくらげを見てたらいいよ」
100円で着いてくるくらげは溶けない氷らしい
つまりはくらげの形をした保冷剤で凍らせれば何度でも使えるというのだ
「んー、このクラゲ持って帰れないかな」
「家にかい?」
「うん」
「後で聞いてみようか」
「うん」
この柔らかい笑顔はくらげよりも癒される
年の離れた弟みたいだ
こういう存在は他に代わりがいないからますます甘やかして可愛がってしまうのだろう
「俺のパスタも少し食べてみるかい」
パスタはオムライスに比べたらそれほど暑くもないし
きっと猫舌なトキくんでも食べられるだろう
「じゃあひと口ください」
「はい」
「…」
「?」
フォークと皿を寄せてやると少し黙って不満そうな顔をする
「あーんはしないんすか」
「…………え?」
「別に何でも。」
?
わかんない、やっぱり思考が読めない……
どういう意味だろう
俺に甘えてみたのか?
それとも冷ませって意味で?
いや分からない
なんだ?そもそも意味があったのか?
待て待て待て待て、考えても多分分からない
分からないから考えるのはやめよう
よし、やろう
やれってことなのは間違いない
「…あーん……?」
「ん…」
前回の反省を活かしたのか目線を合わせず目を閉じず、伏し目がちに食べる
なんだこれ何してるんだったか
これ今どういう気持ちなんだ俺は
「…めっちゃ、たらこ…?」
「なんで疑問形?」
「うん、美味い」
「よかった」
「もう冷めたかな」
「食べてごらん」
「…はいあーん」
「…?」
俺今確実に思考停止してる
トキくんにとってはこれが普通なのか
これってあれじゃないか、カップルとかがやるやつじゃないのか?
「冷めてる?」
「あぁ冷めてるよ」
自分が何を言ってるのかもよく分からないけど頭が動かない
「よかったー
いただきます
…熱っ
……嘘つき」
「…ごめん」
俺も上顎火傷してた
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