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「あの、言いづらかったらごめんなさい。なぜ怪我を?」
「………」
「ごめんなさい。少し気になって。言いづらかったら本当に言わなくてもいいので……」
「………僕、クラスのガラの悪い奴らに…少し、いじめられてるんだ……。」
「いじめ……」
清水先輩はゆっくりと話してくれた。
「ぼ、僕、いつも鈍臭くて、おまけに暗いし、そのせいでガラの悪い奴らに目をつけられて、お、お金とか、せ、せびられてて…」
先輩の話す声ががだんだん小さくなっていく。
「流石に僕のお小遣いも、もう無くなっちゃって…それで今日はじめて少し抵抗してみたんだ…、そ、そしたら『生意気だ』なんて、言われて殴られちゃって…」
明は先輩が話しているのを黙って聞いていた。
「で、でも僕がいけないんだ。人より少し動きが遅くて、それでイライラさせちゃって………し、しかも、ダサいし……メガネで暗いし……ほんとに、僕ってカッコ悪い……」
清水先輩がそう話しながら、顔を俯かせる。
鼻水をすする音が聞こえてきた。
今まで黙って聞いていた明は口を開き、
「清水先輩はきっと、丁寧に生きてるんですよ。」
「…………て、丁寧…?」
「そう。丁寧に。」
どういうことだ?という顔をして清水先輩が明の方に顔を上げる。
「先輩はきっと、毎日を大切にして生きてるんですね。人より動きが遅い?それは先輩が他の人よりも丁寧にその作業をしているからです。」
「そ、そんなこと、ない!」
「いえ、あります。……図書室に貼ってある書籍紹介のポスター、あれっていつも先輩が作ってますよね。」
「!な、なんで知って…作成者の名前書いてないのに…」
「いや、この前本借りる時ちょこっと作り途中の用紙が見えたので。俺、あのポスター見るの好きなんですよ。」
「そう、なの?」
「はい、いつも綺麗な字で本の紹介がされていて、特に文章の構成がとても上手で、今まで紹介された本は全部読んでるんですよ?俺。」
「う、うそ…」
「本当です。」
ふわりと明が笑う。
「あぁ、このポスター丁寧に作られてるなぁって、どんな人が作ってるんだろって凄い気になってて。だからこの前、先輩が作ってるってわかった時すごく納得したんです。先輩がいつも図書当番の時、本を大事に扱っているの知ってたから、先輩が本を大好きなの知ってたから、やっぱり清水先輩が作ってたんだって思ったのと同時に、先輩は凄いなぁって……すみません、こんな長々…」
自分でも何を言ってるかわからなくなり、明は少し恥ずかしくなって目を伏せた。
先輩は明が話している間、明の顔をずっと見ていた。
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