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城下町デート7
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「やれやれ。私も物珍しさが薄れたのか、最近は国民たちがここまではしゃぐこともなくなってきたのだが、今日はお前がいるから珍しく大盛り上がりしてしまったな」
そう言った王が、外套の覆いを外して少年を解放する。少しだけ眩さを感じる目に映った景色には、二人を囲む民の姿はもうなかった。その代わり少年は、立ち並ぶ店で働いている店員や、行き交う人々の柔らかな視線を感じた。それはこちらを凝視するような不躾なものではなく、悪意の籠った恐ろしいものでもない。ただ、見守るような視線が、時折こちらに向けられるのだ。
なんだか温かな何かに包まれているような気持ちがしてしまって、それはそれで居心地が悪い。
そんなことを考えていた少年の手を、王がそっと握った。少しだけびっくりして身体を震わせた少年の頭を撫でてから、王がそのまま歩き出す。
「レクシィに連れ戻されるまで、デートを楽しむとしようか。なに、あれもそこまで無粋者ではないからな。なんだかんだ言っても、多少の時間はくれるはずだ」
「は、はぁ」
デート、と言うが、一体何をするというのか。そもそも、王と一緒にいるせいで誰かとすれ違うたびに声を掛けられたり頭を下げられてしまうので、デートを楽しむどころではない。国民も心得ているのか、引き留められたりすることはなかったが、それでもやはり注目を浴びているのは落ち着けなかった。いや、そもそもそうでなくたって、王とのデートを楽しめるとは思えないが。
大人しく王に手を引かれていると、彼はとある店の前で立ち止まった。
「ここに寄りたいのだが、構わないか?」
適当に城下を見て回るのかと思っていたのだが、どうやら目的地があったらしい。
(え、本当にここに入るのかな……)
少年としては別にどの店に入ろうがどうでも良いので頷いて返しつつ、まじまじと店の外観を見た。
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