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城下町デート8
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女性受けしそうなデザインで纏められた看板と、表から見えるショーウィンドウに並ぶ可愛らしいぬいぐるみたち。
きっと、ここはぬいぐるみを扱う店舗なのだろう。といっても、一般の子供向けの店というよりは、どちらかというと貴族の子供や女性が来るような店のように見える。よくよく見れば、ショーウィンドウに並んでいるぬいぐるみたちも縫製がしっかりしており、高級そうだった。
なんにせよ、この大柄で逞しい国王にはあまり似合わないお店だなぁと少年は思った。
「邪魔をするぞ」
そう言いながら扉を潜った王に引かれて入店した少年は、目の前に広がった光景に小さく感嘆の声を漏らしてしまった。
ほどよい明かりに満たされた店内には、アンティークなのだろう木製家具がセンス良く置かれており、床は複雑な模様が織り込んである絨毯で覆われている。そして、机や棚には予想以上に多くのぬいぐるみが置かれていた。よく見回せば、ぬいぐるみ以外にも女性が好みそうな櫛や手鏡などの雑貨もある。
見ているだけで楽しくなるような空間だったが、一応は職人のはしくれである少年には、並ぶ品々が全て高価なものであることがよく判った。やはり、あまり庶民が馴染めるような店ではなさそうだ。そしてそのことに気づいてしまうと、なんだかこの絨毯を踏んでいることすら申し訳なくなってしまう。
もういっそ外で待っていようかなどと考え始めたあたりで、店の奥から初老の男性が出てきた。
「いらっしゃいませ、ロステアール国王陛下」
「先日は世話になったな、店主。今日はあのとき約束したものを取りに来たのだが、準備は終わっているだろうか?」
「勿論でございます。……そちらのお方が、陛下の恋人様でいらっしゃいますか?」
男性の問うような視線を受けた少年は、一瞬固まってから、対外向けの白熱電球のような笑みを返した。
「あの、皆さんそう勘違いされているのですが、恋人ではないです」
「おや、そうなのですか?」
「そうなのだ。私の精進が足らぬようで、なかなか振り向いて貰えなくてなぁ。どうすればもっと魅力的な男になれるのだろうか」
至極真面目な表情で言われた言葉に、少年は慌てて王を見た。
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