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豹変1
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カーテンの隙間から差し込む陽の光に、少年はのろのろと覚醒した。何度か瞬きをしてから、見慣れない天井に首を傾げる。そのままなんとなくごろんと寝返りを打つと、いきなり目の前に赤茶けた塊が現れて、少年はびくっと肩を震わせた。
「……あ、ロスティ……」
なんのことはない。少年の視界に飛び込んできたのは、赤の王から贈られた巨大なテディベアだった。
ほっと息をついた少年は、テディベアをもふもふと撫でながら、そういえばここはグランデル王城だったなぁとひとりごちる。
グレイの講義が終わった後、用意して貰った夕食を食べて、風呂に入って、滞在中に使うようにと案内されたこの部屋で眠ったのだった。
今回通された部屋は、王の生誕祭のときに使わせて貰った部屋と違い、随分と大きな部屋だった。といっても、前の部屋が狭かったということはなく、今回の部屋が大きすぎるだけなのだ。きっと、前回の部屋よりも良い部屋なのだろう。実際、落ち着いた暗めの赤色を基調にした部屋に並ぶ家具は、どれもこれも緻密で美しい装飾がなされた高価そうなものだし、少年が横たわっているベッドだって、一体何人寝る予定なのだろうかと不思議になってしまうくらいに広い。それどころか、出入り口以外にも扉があることから察するに、恐らく一部屋で構成されている訳ではないようだ。少年は勝手にドアを開けることなどしないので判らなかったが、少なくともこの部屋に繋がる部屋がもう一部屋はあるのだろう。
「……こんなに豪華な部屋にいるなんて、なんだか落ち着かないね、ロスティ」
ロスティというのは、少年がこのテディベアにつけた名前である。勿論、つけようと思ってつけた名前ではない。テディベアの贈り主である王にせがまれてつけたのだ。そんなことを言われてもぱっと良い名前が思い浮かばなかった少年は、咄嗟に王の名にちなんでこの名前をつけたのだった。実に安直であると、少年自身もそう思う。
とにかく、こんなに大きなベッドで一人寝をするのは心細くもあり申し訳なくもあった彼は、ないよりはマシだろうということで、テディベアを抱えて寝たのだ。
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