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豹変2
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取り敢えずベッドから出た少年が、着ていた寝間着(サイズがぴったりのものが何故か王宮に用意されていた)を脱いで普段着に着替えていると、ちょうど着替え終わったところで扉を叩く音がした。
「はい、どうぞ」
そう声を掛ければ、廊下に通じる方の扉が開き、年配の女官が湯の張られた桶や食事が乗ったワゴンを押しながら入ってきた。この女官は、少年も知っている。赤の王の生誕祭の折に少年の身の回りの世話をしてくれた、グランデル王宮の女官長だ。
あのときも王宮の女官長に世話をさせるなどとんでもないと言ったのだが、王が一番信頼を置いている女官が女官長らしく、譲ってくれなかったのだ。だからきっと今回もこうなるだろうと思っていたが、やはりといった感じである。
「おはようございます、キョウヤ様。昨晩は良くお眠りになれましたか?」
「あ……はい」
「それは良かったですわ。それでは、こちらにお湯をご用意致しましたので、お顔を洗ってくださいな。タオルは横に置いてあるこちらをお使いください。それからご朝食ですが、申し訳ないことに陛下は現在ご多忙でご一緒できないとのこと。お心細いかと存じますが、こちらのお部屋でお一人でお召し上がりくださいませ。……他の者がいては、落ち着いてお食事できませんでしょう?」
ふふ、と上品に笑った女官長に、少年はぺこりと頭を下げた。
前のときもそうだったが、この女官長は少年が他者との関りをあまり好んでいないことを良く知っているのだ。恐らく、王から言われているのだろう。
「あの、お気遣い、ありがとうございます」
「あらあら、お気遣いだなんて。キョウヤ様は本当にお優しい方ですわ。私など一介の女官に過ぎないのですから、そのようにかしこまる必要はありませんのよ? そうですわねぇ。どうぞご近所のお節介なおばさまのようにお考えになって」
「え、いえ、そういう訳には……」
なんだってただの庶民が王宮勤めの女官長を近所のおばさん扱いしなくてはならないのか。そう思って慌てて首を横に振った少年に、女官長は一層頬を緩ませた。
「陛下の仰る通り、キョウヤ様はとても謙虚でいらっしゃいますわね。そんなところも魅力的ですわ」
「え、ええ……」
やはりこの国の人たちは皆どこかおかしいのかもしれない。
本気でそんな失礼なことを思った少年だったが、正直にそう言う訳にもいかないので、曖昧に微笑んでおいた。
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