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天ヶ谷鏡哉1
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冷えきった目でこちらを見る少年が、片眉を上げて首を傾げた。
「聞こえなかったのか? なんでテメェがちようを知っているんだと訊いているんだ」
少年の問いに、グレイはいまだ困惑する頭を叱咤して働かせる。どうやら彼は“ちよう”の名に強く反応しているようだが、現状ではそれ以上のことは判らない。天ヶ谷鏡哉、いや、『彼』にとって、ちようとは何なのだろうか。
とにかく、『彼』の意図が判らない以上、うかつに問いに答える訳にはいかない。
(そもそも何なんだコイツは。……帝国の手の者が、何らかの魔導でキョウヤに憑依した? いや、それならオレにかまけていないでさっさと逃げる方が良いだろう。そもそも、わざわざオレに正体をバラすような真似はしねェ筈だ)
ならば、これは帝国の一件とは全く関係のないことだとでもいうのだろうか。そんなことを言い出したら、考えられる可能性などそれこそ何百通りもある。実質的に手詰まりと言って良いだろう。
『彼』に対する警戒を強めつつ思考していたグレイだったが、そんなグレイに『彼』が僅かに目を細めた。
「なるほどな。飽くまでも答えねェつもりか」
グレイの沈黙を拒絶として受け取ったらしい『彼』が、足元に転がっていた硝子のコップを拾い上げる。
「それならそれで構わない。力づくで吐かせてやるよ」
そう言って『彼』は、持っていたコップを地面に叩きつけた。その行動の意味を察したグレイが魔術を展開するよりも早く、割れて飛び散った破片を右手で器用に掬い上げた『彼』は、グレイに向かって跳躍した。そのまま一瞬でグレイとの距離を詰めた『彼』が、右から左へと硝子を奔らせる。
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