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ロステアール・クレウ・グランダ8
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そんなことを考えていたから、きっと少年は酷い顔をしていたのだろう。少しだけ笑った王が、まるであやすように少年の頭を優しく撫でた。
「これは困ったな。そんなに悲しそうな顔をしないでくれ」
「え、あ、……すみません……」
「こらこら、謝る必要はないというのに。……しかし、お前に話しておくべきことはまだまだあるのだが、どれもこれも愉快な話ではないからな。この辺でやめておくか?」
気遣う言葉に、少年は少しだけ迷うように瞳を揺らした。けれど、少しの逡巡の後、ゆっくりと首を横に振る。王のつらい話を聞くのは怖かったが、なけなしの勇気が残っている限りは頑張ろうと思ったのだ。
そんな少年の覚悟が伝わったのか、そうかと頷いた王が、再び話を始める。
「母の命を奪ってまで生まれてきた私だったが、これがまた大きな欠陥を抱えていてな。困ったことに、感情の一切を持たずに生を受けてしまったのだ」
「……どういうこと、ですか……?」
「言葉通りの意味だ。私は生まれたときからずっと、感情というものを知らずに生きてきた。喜怒哀楽の全てを持たずに生まれたせいで、他者から見た幼い頃の私は、まるで人形のようだったそうだ。確かに、その所見は間違いではなかったのだろう。人形と違うところといえば、呼吸をして自発的に動けるところくらいだったからな」
感情がないということがどういうものなのかは判らなかったが、ただ漠然と、それは時に幸福なことで、時に不幸なことなのかもしれないと少年は思った。
「だが、幸いなことに友に恵まれた。レクシィが、ろくな反応も返せぬ私に根気よく感情のなんたるかを教えてくれたのだ。お陰様で、今ではそこまで意識をせずとも表情を用意することができるようになった」
なんでもないことのように言って笑った王だったが、少年は困惑の表情を隠せないでいた。
「表情を、用意……?」
戸惑うような声に、王が頷く。
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