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ロステアール・クレウ・グランダ13
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「あれは、私がやったのだ。どうやったのかなど覚えていない。だが、確かに私がやった。父親を殺されたことに対するものなのか、優れた王を民から奪ったことに対するものなのか。それは私にも判らない。だが、あのとき私は、きっと怒りを感じていたのだろう。その感情は、私が認識できるほど表層まで上がって来ることはなかったが、私はきっと怒りに満たされていたのだ。そして怒りのままに、父上を殺した人間を全て殺した。……私のことを母の息子としてしか認識してくれなかった父ではあるが、それでも、向けられた愛情に何がしか思うことがあったのかもしれないな。勿論、私にはよく判らないのだが」
やはり淡々とそう述べた王は、そこでようやく少年に視線を戻し、緩く微笑んでみせた。
「とにかく、この一件により王家の血を引いた人間は私とロンター家を残して皆滅んでしまい、その事実は、父上である前王の崩御よりも国を揺るがすこととなってしまった。結局のところ、私は事態をより悪化させてしまったのだ。だからこそ、私はその責任を取り、この国をより良く導けるような王を迎えようと思った。……だが、どんなに考えようとも、私が王になる以上に良い案が浮かばなかった。無論、王家の血を引くレクシィは優秀で、王の器として十二分であっただろう。だが、国王の崩御に加え、それを招いたのが王家そのものであるという事実は重すぎた。最早国内の混乱は一人の王の手に担いきれるものではなく、その重荷をレクシィに任せるのはあまりにも酷だ。……だから、私が王として立った。感情を持ち合わせない私ならば、一切の私情を抱かず民の意向のみを汲み取り、民の望むままに国を導くことができるからな。そして、私のこの考えは正しかった。民の望む通り、求める通りの治世に努めた結果、国はより安定し、民には笑顔が戻ったのだ」
王の話が事実ならば、彼はこれ以上ないほどに優れた統治をしてみせたのだろう。それは誇るべきことだろうに、当の王はまるで他人事のような調子だった。
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