アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
異変16
-
「……ああ、ロストさんのご紹介ですね。ありがとうございます。それで、どのようなデザインをお考えですか?」
王国軍の兵がわざわざ来たということに驚きつつも、笑みを象った表情を崩さないまま、少年が答える。突然のことではあったが、感情を表情や態度に出さないようにすることには慣れているのだ。尤も、あの赤の王の前ではいまいち上手くいかないのだが。
「それなんだけど、こう、モチーフにして貰いたいものがあるんだよ。けど、俺の下手糞な説明で伝えられる気がしないから、できれば実物を見て貰いたい。ああいや、変なものじゃないよ。街の外れに咲いている、ものすごく綺麗な花なんだ」
「なるほど。花を基調にしたデザインをご所望ということですね」
「あー、いや、……うん。……男が花の刺青をするなんて、やっぱりちょっと変だろう? だけど、俺は本当にあの花を気に入ってしまったんだ。摘み取って持ってくるのすら勿体ないって思ってしまうほどにさ。だから、こう、なんとか男の身体にあっても格好悪くない感じのデザインを考えてくれないかい? ロストさんに訊いたら、店主さんならできるだろうって薦められたんだよ」
懇願するようにそう言った男に、少年が頷く。
「判りました。それで、実物を見せたいということですが、いつにしましょう?」
「ああ、ありがとう店主さん! もうこうなったら善は急げってやつで、今からどうだい?」
「今から、ですか。……そうですね、今日はもう予約のお客様もいないことですし。それでは、少し準備しますのでお待ちください」
少年の返事に、男が嬉しそうな顔をして頷く。これが全て演技だというのだから、なかなかに凄い話だ。確かにこれなら、本当の客のように見えるだろう。
しかし、ここまで徹底しているということは、既に帝国の誰かが自分を監視しているのだろうか。
「それじゃあ店主さん! 外にうちの騎獣を待たせてるから、一緒に乗っていこうか!」
一緒に騎獣に乗る、という発言に一瞬困ってしまった少年だったが、それを表情に出すことはせずに大人しく頷いた。
少年は他人が近くにいるのが苦手なので、誰かと一緒に騎獣に乗るのはあまり好きではない、というより寧ろ嫌いなのだ。だが、状況が状況だけに我儘は言っていられないだろう。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
114 / 216