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異変22
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「っ、……す、こし……っ、むねの……、」
「とにかく、早く落ち着ける場へ移動致しましょう。ダリ! 早くキョウヤさんを騎獣に乗せるのです!」
「ぃ、いえ……」
ギルヴィスの提案に、必死で首を横に振る。ここで騎獣に乗せられてしまうと、何のためにこんな演技をしているのか判らない。
「発作、は……動かず、おとな、し……っ、は、ぐ、……していろ、と……ぉ、医者、さま、が……っ」
言っていることは口から出まかせだが、苦しそうな演技でごまかせば、ある程度の信ぴょう性が出るはずだ。特に内傷ならば、ぱっと見で嘘かどうかの判断はできないだろう。帝国にとって少年は重要な存在であるようだから、一度少年の嘘を信じさえすれば、下手に動かすのは危険だと判断されるはずだ。
あとはもう、この嘘がどれだけ保つかである。
本当に帝国が赤の国で何かをしているなら、いずれ本物のギルヴィスが動いてくれるだろうし、そうでなくても、金の王が帝国から狙われている少年に対し何の対策も行っていないとは考え難い。その対策が具体的にどんなものかまでは判らないが、今はそれに賭けるしかないだろう。
地面に転がって出来得る限り苦し気な声を漏らせば、頭上でギルヴィスが狼狽えているのが判った。
頼むからどうか、そのまま騙されていて欲しい。
そうして暫く悶えていると、やはりいけません、とギルヴィスの不安そうな声が聞こえた。
「お医者様が動かすのは良くないと診断されたとはいえ、こうも発作が収まらないのを、いつ帝国の襲撃が来るか判らないここで待っているわけには参りません。お辛いでしょうが、やはり一度場を移しましょう」
「っ、でも、」
少年は慌てて否定の意を示す。まだ助けの手は来ない。移動してしまえばそこでおしまいなのだ。
「しかし、キョウヤさんのためにも、落ち着ける場が必要ではないでしょうか? 安全な場所で、お医者様に診て頂きましょう。できるだけ丁寧に運ばせますから」
「……っ、ぃ、いえ……ぼくは……」
「キョウヤさん」
それは、少年を心配しているというより、何処かこちらを威圧するような声音だった。僅かに背筋が粟立つ。少年は自身に向けられる悪意に敏感なので、ギルヴィスの声に含まれる僅かな苛立ちを感じ取ってしまったのだ。
「キョウヤさん。この場が危険であると、貴方もご承知されていらっしゃるのでしょう?」
それとも、と続ける声が、やけに少年の耳に響いて残る。
「――何か、この場に留まらなくてはならない理由がお有りで?」
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