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水の呪い5
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(しかし、若造ときたか)
目の前の女はどう多く見積もっても三十代そこそこにしか見えないが、口振りや態度から感じる圧はその年齢の女に出せるものではない。それに加え、さきほど王の一撃を避けた際に見せた獣じみた動きとなると。
「……ヒトではない、か」
ぽつりと呟いた王に、女がにやりと笑う。
「ヒトだとかヒトじゃあないとか、そんなこたぁどうでもいい。早くヤろうぜ? こっちはようやくお目当ての男がお相手だって、興奮してるんだ!」
叫んだ女の瞳孔が縦長に細まり、両の肘から下がぶわりと鱗に覆われる。同時に両の手の爪が鋭い刃物のごとく伸び、彼女の両腕は見る見るうちに凶器へと変貌していった。
(やはり異形か!)
衝撃に備えて胸の前で剣を構えた王に対し、大地を強く蹴って跳躍した女が肉薄する。斜めに振り下ろされた爪の一撃を剣で受け止めた王は、想像以上の負荷に腕が軋むのを感じるや否や、身体を左に捌いて腕から力を抜いた。抗う力がなくなったのを良いことに振り切られた爪が、王の剣を叩き落として地面を抉る。
轟音と共に深く切り込まれた大地を目端に捉えた王は、しかしそれに構うことなく左手を女の背に向かって突き出した。
「火霊!」
王の呼びかけに応え、その左腕を起点に奔った炎が彼女を襲う。同時に、落ちた剣を風霊から受け取った王は、剣による横薙ぎの追撃を入れた。
確実に一撃は入れられると踏んでいた王だったがしかし、鈍い音と共に強固な金属に当たったような手ごたえがし、振り切られるはずだった刃が止められてしまう。
「っ!?」
王が思わず息を呑んだのも無理はない。女は、王の膂力を以て繰り出されたグランデル王国一の剣戟を、腕の鱗で受け切って見せたのだ。
「ハハッ! やるじゃあないか!」
楽しそうに叫んだ女が、剣を受けていた腕を力の限りに振り、刃を弾き返す。
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