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水の呪い8
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「っ!」
空を切り裂いた爪が、凄まじい衝撃波を引き起こす。その波に呑まれ、火霊の生み出した火球が千々に裂かれて掻き消された。しかし、空気を震わせて奔る衝撃は、尚も勢いを失わない。そのまま王目掛けて飛来するそれに、感知能力に乏しい王すらをも圧倒するほどの水の気配がおぞましく纏わりついていることを察知した王は、表情を険しくした。
(およそ人の手とは思えんほどの水の呪い! あれは最早ただの衝撃波などではない! 強すぎる呪いによって物質としての形を成した水の刃そのものだ! あんなものを叩きこまれたら、火山の停止を待たずともこの大地は死んでしまう!)
恐らくは呪いの一端に触れるだけで、その場からは火の加護が失われてしまう。放たれた刃は、それほどまでに怨嗟の込められた何かだった。
(どうあってもあれをこの地の全てに触れさせる訳にはいかん! ならば……!)
身体の前で剣を横に構えた王が、叫ぶ。
「正面から受けるぞ!」
その言葉に、火霊が躍り、王の前面に分厚く巨大な炎の壁を作り出す。同時に彼らは、僅かでも王の元へ届く攻撃の威力を弱めようと、飛来する斬撃に向かって炎を吐き出した。だが、それらをも蹴散らしながら押し進んだ一撃が、とうとう王の構える剣へと到達する。
しかと大地を踏みしめ、衝撃の全てを受け止めた王は、しかし想定以上の威力に僅かに顔を顰めた。
これが青の王であれば、水が抱いた怨嗟をも浄化できただろう。橙の王であれば、水を制する地霊魔法を以て打ち砕いただろう。どちらにしても、これほどまでの苦戦を強いられることはない。
だが、赤の王が得意とする火霊魔法では、どうしても水系統の攻撃に後れを取ってしまう。その上、赤の王は火霊に愛されるが故に、水霊には酷く嫌われるものだ。元より水からの恨みを買いやすい王に、更なる怨嗟が加われば、それは常人にぶつけられるものとは比にならないほどの呪いへと変貌する。
(実によく考えられている。ただの足止めではなく、あわよくば私という戦力を低下させるつもりだな)
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