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水の呪い9
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実際、火霊の力を存分に借りている現状を以てしても、衝撃を受け止めて膠着状態に持ち込むだけで精一杯だ。この一撃への対処に徹さざるを得ない王に対し、敵の方は自由に動けることを考えると、この隙に直接攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。だからこそ、王に悩む暇はなかった。ここで必要なのは、この強力な呪いを打ち砕く一手のみである。
「大地を育む盾よ 水を制する刃よ 今我が呼びかけに応え 空をも貫く槌となれ! ――“裁きの石槌”《グラウンド・ラム》!」
叫ぶと同時に、王の眼前の大地が揺れ、巨大な柱が突き上がった。大地が変異して生じたその柱が、水の呪いを纏った刃を高々と打ち上げる。
(私が持ち得る最上の地霊魔法だったが、やはり呪いを砕くことはできないか!)
地霊魔法による大地の柱は、呪いの刃を打ち上げることこそできたものの、破壊するまでには至らなかった。つまり、未だ水の呪いが込められたあの一撃は死んでいないのだ。
恐らく、女の方もそれを理解していたのだろう。王を狙って駆け出していた彼女は、ふいに軌道を変えて、高くそびえる柱の方へと向かっていった。彼女の行動を止めようと炎が襲いかかるが、勿論それが効くことはなく、彼女はすぐさま柱の元へと辿り着いてしまう。
「オラァ!」
雄叫びと共に、女が鱗に覆われた拳を大地の柱へと叩き付ける。人外たる彼女の力は、たった一撃で柱の根元を粉砕してしまった。
(いかん! このままでは呪いが降って来る!)
最早一刻の猶予もない。そう判断した王の行動は早かった。
僅かな迷いすらなく、傾きだした大地の柱の頂きに見える水の刃を睨み、叫ぶ。
「――――“森羅万象焼き滅ぼす炎”《グラン・フレア・フラメス》!」
瞬間、王の足元から噴き上がった莫大な量の炎が、天上高くに舞う水の刃に纏わりつく。見る見るうちに膨れ上がり、巨大な炎の球体となったそれは、僅かに収縮した。そして一呼吸後、太陽と見紛うばかりの輝きを放つ炎の塊は、凄まじい爆音と共に全方位に向かって弾けた。大地を揺るがすほどの衝撃と爆風が広範囲を呑み込み、王が生み出した柱が塵芥と化す。荒れ狂う熱気はそれだけで何もかもを焼き焦がさんばかりに壮絶で、あらゆるものへと襲い掛かり、無慈悲なまでに生命を拒絶していた。
そうして強大な爆風と熱量の放出を終えたそこには、大地の柱は勿論、あの呪いの刃すらも跡形も無くなっていた。
まさに、街ひとつを滅ぼすと言われている大魔法の真の姿である。
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