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水の呪い11
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(つまり、帝国の誰もがこのような力を持っている可能性は極めて低く、それどころか、彼女こそが対私用の最終兵器である可能性が高い)
確かに強敵ではあるが、あの水の守りさえ剥ぎ取ることができれば、もっと己が得意とする戦い方ができるはずだ。それにもうひとつ、王には気になることがあった。
続きをしようと言わんばかりに構えた相手に対し、王が口を開く。
「随分と強力な水の守護を身に着けているようだが、生来のものではないな? これほどまでの怨嗟を孕んだ汚れた水の守護を得るような人物には見えん」
王の言葉に、女は形の良い眉を顰めた後、盛大な溜息を吐いた。
「ああ、この鬱陶しい水の呪いな。依頼人のクソ野郎に無理矢理つけられたんだよ。グランデル国王と戦うなら必須だろうってな。こんなもんなくたって十分楽しめるし、そもそもどろっどろに穢れ切った水の守護なんて、身に着けてて気持ち悪いってぇのに。だがまあ、備品を貸し出されてる以上、依頼はきっちりこなさないとな」
女の言葉を聞き、王はほんの僅かではあるが、張り詰めていた緊張の糸を緩めた。無論、気が抜けない状況であることには変わりないが、少なくとも彼女が『敵ではない』ということが判っただけでもよしとしよう。
(どこまでが帝国の目論見なのかは判らんが、少なくともこの女に敵対の意思がないのは幸いだな。ここで純然たる敵としてで向かわれてしまっては、こちらもそれ相応の被害を覚悟せねばならないところだった)
王にとってやや不利な戦況が変化した訳ではないが、これで打開策は見つかった。
「おいおい気ぃ緩めて良いのか? まだまだこれからだろうが!」
再び向かってきた敵をいなしながら、王が小声で風霊の名を呼ぶ。
「レクシィに言伝を」
敵に聞かれぬように小さく続いた言葉を、風霊が受け止める。そのまま風が走り去るのを確認してから、王は再び剣を構えた。
これで次の手は打った。あとは、王がそのときまで耐え忍ぶだけだ。
「私もこれほどの相手と戦う機会はあまりない! お互いに楽しもうではないか!」
そう叫んだ王に、女はやはり歓喜に満ちた笑みを深くした。
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