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水の呪い12
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ガルドゥニクスらと共に王宮の軍議室で待機していたレクシリアは、ふいに風が耳元を優しく撫でたのを感じ、風が吹いてきた方へと目をやった。それと同時に、レクシリアの耳に音が運ばれる。そうして伝えられた言葉に、レクシリアは一瞬動きを止めた後、慌てた様子で卓上に置かれている国境付近の地図を漁りはじめた。
「リーアさん?」
主の突然の行動にグレイが訝しげに名を呼んだが、レクシリアはそれに応えることなく一枚の地図を手に取って睨んだ後、小さく舌打ちをした。そしてグレイを振り返って、手に持っている地図の一点を指し示す。
「グレイ、今すぐこの付近の詳細な地図を持ってきてください」
「詳細な?」
グレイが思わず訊き返したのは、レクシリアの手にある地図自体が既にかなり細かな情報が記載されているものだからだ。これ以上詳細な地図となると、グレイが思い当たるのはひとつしかない。
「もしかして、特別書庫に入っているあの地図ですか?」
半信半疑で尋ねたグレイに、レクシリアが頷く。そんな宰相を見て、思わずといった風にミハルトが口を開いた。
「お待ちください宰相閣下。あの書庫に入っている地図は、土地の開拓などに使われるような細かな座標が書きこまれているものです。縮尺も著しく大きく、とてもではないですが、軍議の場で使用できるようなものではありません」
ミハルトの言葉通り、王宮の特別書庫に収められている国内の地図は、橙の国の測量技術と金の国の描画技術を駆使して作製された特殊な地図だ。地図上に描かれた細かな格子は南北方向と東西方向の二成分によって構成されており、それぞれの座標の値は十桁にも及ぶ。故に、地図一枚に描ける土地の範囲はとても狭く、こういった会議の場に出すような代物ではないのだ。
「ミハルト副団長の仰る通りです。あんなもの、一体何に使うって言うんですか」
やや呆れたような調子で言ったグレイだったが、別に主人を馬鹿にしている訳ではない。レクシリアが必要だと言うからにはあの地図が必要なのだろうことくらいは判る。だが、その使い道が全く想像できないので、つまりはこちらの想像が及ばないような無茶苦茶な使い方をするのだろうと察しがついたのだ。
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