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水の呪い14
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「……もう良いです。判りました。早急に地図をお持ちします」
そう言い捨て、グレイが部屋を出ていく。それを見届けてから、ガルドゥニクスはレクシリアを見た。
「しかし宰相閣下。国境まで矢を届かせるなど、風霊魔法による補助があったとしても、生半可な腕の持ち主では無理ですぞ。その上、座標レベルで正確な位置に、これまた定められた角度で矢を射るとなると……」
言い淀んだガルドゥニクスが、ミハルトを見た。団長の意図を察したミハルトが、ひとつ頷き、レクシリアに向かって口を開く。
「中央騎士団で最も弓術に優れているのは自分であると自負しておりますが、その私でも不可能です。そもそもの問題として、お恥ずかしながら、私の矢では飛距離が圧倒的に足りない。正確性以前の話です」
ガルドゥニクスとミハルトの言葉は、レクシリアも予期はしていた。
グランデル王国の騎士団は、総じて接近戦の方が得意な気がある。グランデルの軍事力が円卓の連合国一であることは間違いないが、遠距離戦においては風霊魔法を得意とする緑の国に遅れを取るのもまた事実なのだ。
「ミハルト副団長でも不可能、ですか」
「お役に立てず、申し訳ありません」
頭を下げたミハルトに、レクシリアが柔らかく笑って首を横に振った。
「いいえ。貴公の真価は剣術にあります。弓術について謝罪する必要はないでしょう。寧ろ、片手間の鍛錬でそこまでの腕に至ったこと、誇って良いと私は思います」
レクシリアの言葉に、ミハルトが僅かに苦笑する。
「宰相閣下がそう仰ると、些か厭味じみて聞こえますね」
「おや、そうでしょうか? そんなつもりはなかったのですが……」
首を傾げた宰相に、今度はガルドゥニクスも曖昧な笑みを浮かべた。
「とにかく、この一件は宰相閣下に一任するということでよろしいですかな?」
ガルドゥニクスの問いに、レクシリアが頷く。
「まあ、そうせざるを得ないでしょうね。矢には地霊魔法を存分に乗せて欲しいとのご要望もありましたし」
「…………そりゃあ、また、随分と無茶を仰いますなぁ……」
「…………初めから私には無理だったじゃないですか……」
地霊魔法があまり得意ではないミハルトは、レクシリアを見て少しだけ恨めしそうな顔をした。
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