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水の呪い16
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「それで、どこへ行くんです?」
「東の監視塔だ」
レクシリアの口調が急に砕けたのは、この部屋にグレイしかいないからだろう。赤の国の宰相の性格が実は粗野なことは割と皆知っていることなのだが、それでも本人は公の場で敬語を外すことはしない。どうやら、宰相たるもの常に聡明そうな話し方をするべきである、という謎の信念によるもののようだ。それで実際にその通りにしようと努めているのだから、律儀と言えば律儀な男である。
「それなら歩いて行くより、騎獣に乗った方が早いですよ」
そう言い、グレイが執務室の大窓を開け放つ。すると、大きな黒い獣が窓の外から顔を覗かせた。まるで、ずっとそこに控えていました、とでも言うようにどこか誇らしげな顔をしている獣に、レクシリアが少しだけ驚いた顔をする。
「ルーナか。随分準備が良いな、グレイ」
ルーナと呼ばれたその獣は、グレイの騎獣だ。グレイが与えた正式な名前はルーナジェーン。ミオンという種類の、猫のような愛らしい姿をした翼持つ騎獣である。
「どうせ移動することになるだろうとは思っていたので、近くにいるよう指示を出しておいたんですよ。ほら、ルーナの首輪に新しい魔術具をつけましてね。オレの持っている魔術具を作動させると反応するようになっているんです」
首輪が出した合図に従って自分の元まで来たのだ、と言ったグレイに、レクシリアは素直に感心した。
「魔術も便利なもんだなぁ」
「魔法が使えないオレに対する厭味ですかそれ。殴りますよ」
じろりとレクシリアを睨んでから、グレイが窓からルーナの背に飛び乗る。
「リーアさんも加わると重いだろうが、東の監視塔までなら飛べるな?」
グレイの問いかけに、ミオンが任せろといった風に鳴く。
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