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水の呪い23
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「……身体強化魔法か。そんなものまで使えるとはな。アンタは魔法に関しちゃ相当不器用だって聞いてたが、存外器用な真似をするじゃあないか」
「それはまた、不名誉な噂が流れているようだな」
そう言って笑ってみせた王だったが、ヒトならざる彼女の言っていることは正しい。身体強化魔法は、熟練者ならば必要な瞬間に必要な箇所のみを強化することも可能な魔法であるが、王はその切り替えを瞬時に行うことができないため、結果的に継続的な全身強化をせざるを得ない。その上、地霊魔法の適性が高くはない王にとっては、地霊魔法と火霊魔法を複合して扱うこの魔法による魔力消費は著しく大きいのだ。
「三倍ってこたぁ、通常時の三倍の力を発揮できるってところか? いや、力だけじゃあなくて速度も増してるな。だけどお前、三倍で動けるってぇ判ったなら、こっちもそれに合わせて調整するだけだぞ?」
「構わんよ。三倍ならば、お前の動きに対処し切ることもできよう」
事実、王の目は彼女の出す攻撃の全てを見切ることはできていた。だがそれに、人間の身体の反応速度が追いつかない。ならば、一時的に人間としての限界を取り払ってやれば良い話である。そしてそれを実現させるのが、身体強化魔法であった。
「言うじゃあないか!」
そう咆えた女が、再び王へと肉薄する。その後は、ひたすら剣と爪、そして炎と水のぶつかり合いだった。常人の目では追えないほどの速度で繰り出される攻撃を互いに捌き、そして反撃に転じる。相手によって逸らされた一撃は大地を抉り、戦場となった地にいくつもの爪痕を残していった。
激しい戦闘は、一見すると互いの力が拮抗しているように見えたが、その実徐々に押され始めているのは身体強化を施している王の方であった。通常時の三倍に至る強化を行っても尚、異形たる女の純粋な身体能力に届いていないのだ。
(なんの異形かは知らんが、相当な上位種と見える)
だがそれでも、かつて偶然出会ったあのドラゴンに感じた畏怖のようなものはない。それはすなわち、王にも勝機があるということだ。そして、王にはその勝機を手繰り寄せる自信があった。
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