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水の呪い26
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「しっかしとんでもない王様だな。一体いつこの作戦を考えついて、どこからが布石だったんだ? あの三倍だとか叫んだのは、間違いなくわざとだよな。あそこでああ言うことで、強化の度合いを変えるためには精霊に対する明確な意思表明が必要だって印象付けたんだろう? 最後の攻撃に繋がる布石ってやつだな。そんでもって、五倍は強化したんだろう最後の攻撃は、アタシの体勢を崩す役目のほかに、矢の存在をこっちに気取らせない役も担ってたってところか。しかし変だな。アンタが矢を放った様子は見られなかったが、まさかアタシの目ですら追えないほどの速度で動いたってか?」
地面に座って息を整えている王の目の前に、女がどかっと座り込む。どこかきらきらした表情で見てくる彼女の目は、判りやすく期待に満ちている。
「いや、残念ながら、私の動きが貴公の動体視力を上回ることは万にひとつもないだろう。なに、簡単な話だ。ちょっとした小技を使って、指定した場所に遠くから矢を放って貰ったのだよ。私はそれが水の守りに当たるよう、タイミングを合わせただけに過ぎん。」
「……なるほどなぁ。アタシはアンタのことを人間だと思ってたが、アンタもまたヒトならざるものだったってぇ訳か」
納得したふうな女の言葉に、王は心外だというような表情をしてみせた。
「何を言う。私はれっきとした人間だ。そもそも今回のこれは、貴公が水の守りを見えるところに身に着けてくれたお陰でやりやすかっただけだ。服の中などに隠されていたならば、もう少し手間取ったとも」
「手間取ったって表現をするあたりが、本当に食えない男だな。アンタみたいなのが人間であって堪るかよ」
少々呆れた顔をして、女は王を見た。手間取る、ということは、つまり可能ではあるということである。
「大体、人間は明確な命令なしに精霊を意のままに操ることなんてできやしない。事前に細かく指令を下していたんなら別だろうが、アンタはそういう器用なことができるタイプじゃないんだろう?」
「さて、どうだろうな」
答える気がない様子の王に、女はやはり呆れたような顔をした。
「やってることが人間の領域を超えてるっつってんだよ」
「そうは言うが、人間なのだから仕方がない」
あっけらかんと言ってのけた王に、女は勝手に言っていろと息を吐いた。
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