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窮地10
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「…………あ?」
護衛。ヨアンと名乗った男は、確かに護衛と言った。しかも赤の王に頼まれたと。一体いつからだ。まさかついさっきということはあるまい。ということはこの男、ここに至るまで窮地に立たされた少年を黙って見ていたというのだろうか。
疑念やら怒りやらで咄嗟に何も言えないままヨアンを睨んだ『グレイ』は、ふと地面に落ちるヨアンの影が不自然に揺らめいたような気がして、思わずそちらに視線を投げた。そして目に入ったものに、『グレイ』が息を飲む。
青年の影の中に、何かがいるのだ。無論、『グレイ』にはそれが何かまでは判らない。だがそれでも、異形の片目は確かにその存在を認識した。
ヨアンの影の中で蠢いているのは、まるで黒い汚泥の塊のような、どろりとした何かだった。もしかすると二月ほど前に貿易祭で出会った魔物に似ている生き物なのかもしれないが、これはあれよりもずっと凶悪で恐ろしいものであると、本能が警鐘を鳴らす。
「……テメェ、」
強張った表情で洩らした言葉は、『グレイ』が思っていた以上に掠れてしまった。一方のヨアンは、そんな『グレイ』を見て不思議そうに首を傾げてから、ああ、と納得したような声を上げた。
「エインストラだからこいつが見えるんだ。でもそんなにビビんなくて良いよ。こいつは俺の味方みたいなものだし、あんたに害は与えないから。それでも気になって困るんなら眼帯しとけば? そうしたら見えないんじゃない?」
「……ソレは、一体何だ」
提案を無視して睨むように見てきた『グレイ』に、ヨアンは少しだけ眉根を寄せた。
「説明するの面倒だし、説明したところで俺に何の得もないからやだ。取り敢えず、敵じゃないし危険でもないってことは教えてあげたんだから、良いでしょ」
そう言い、ヨアンはうんざりしたような顔で手を差し出して、ひらひらと振った。
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