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窮地14
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「…………わ、わかん、ない……」
「呆れた。そういうの判んないで、よく戦争に参加しようと思えるね。やっぱ馬鹿なのかあんた」
「っ、う、ぅ……」
「つまるところあんたはただの捨て駒ってことだね。……もう少し何か聞き出せるかと思ったけど、向こうも頭使ってるんだろうな」
はぁ、と大きく溜息を吐いたヨアンの脚に、ひぐひぐと嗚咽を漏らしながらアンネローゼが縋りつく。
「こ、殺さないで……。お、弟が、身体、弱くて、……私が、ちゃんとお役目、果たせたら、お医者さんが、」
嗚咽を洩らしながらズボンの裾を弱々しく握った小さな手を見つめ、ヨアンが目を細める。
「不幸自慢はいらないよ。質問に答えてくれるなら殺さないし、質問に答えないなら殺す。それだけだから」
抑揚の薄い声でそう吐かれ、アンネローゼは絶望したような表情を浮かべたが、そんな彼女を見てヨアンはやはり首を傾げた。
「当然でしょ? あんたは俺にとって敵国の人間だ。だから、あんたが死のうがあんたの弟が死のうが俺には関係ない。俺、何も間違ったこと言ってないよね?」
やはり淡々と言ったヨアンに、アンネローゼが縋りついていた手をぽとりと地面に落とし、唇を震わせる。
「……ちゃんと、答え、ます、から……」
掠れた声でか細くそう呟いた少女に、ヨアンは満足そうに頷いた。
「判ってくれたみたいで良かった良かった。と言っても捨て駒のあんたじゃどうせろくなこと知らないだろうし、……んー、じゃあ答えられそうなのにしようか」
そこで一度言葉を切ったヨアンが、アンネローゼを見つめた。
「あんたの魔導、多分だけど割と高等なものだよね。まだ子供のあんたがそこまでの魔導を使えるのって結構すごいことだと思うんだ。にも関わらずあんたを平気で捨て駒にするってことは、帝国にはもっと優れた魔導師がたくさんいる、ってことなのかな? ……ちょっと前までは全然そんなことなかったと思うんだけど、何かあった?」
ヨアンの問いにアンネローゼは迷うように視線を彷徨わせたが、それでも死の恐怖が勝ったらしく、のろのろと口を開いた。
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