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窮地16
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「ああああああああああああああああ!!」
肉が引きちぎられる痛みに、アンネローゼが絶叫する。それはまるで誰かが力ずくで口をこじ開けているようにすら見える光景だったが、しかしこの場で呼吸をしているのは彼女とヨアンと『グレイ』だけで、彼女に触れている者は存在しない。もしやヨアンが何かをしたのかと『グレイ』は彼に視線をやったが、驚きが滲んでいるヨアンの表情を見るに、その可能性は低いようだ。
実際、これはヨアンにとっても予想外の展開で、彼は焦ったような声で精霊の名を叫んだ。
「火霊でも地霊でも良い! どうにかして!」
ヨアンの命に、すぐさま生まれた火がアンネローゼへと奔る。しかし、火霊が何をどうしようとしたのかは判らないが、結果として、赤い炎はアンネローゼに触れる直前に弾かれて掻き消えてしまった。恐らく、結界かそれに相当するような何かによって阻まれたのだろう。
そうしている間にも、少女の小さな口は見る影もなくばっくりと開き、そして反転するように自らの身体を飲み込み始めた。初めに反転した上顎が頭を飲み込み、それでも止まらないそれは、少女の身体をぼきぼきを折り曲げつつ進行する。そして、あっという間に少女の身体がひとつの肉の球と化してしまった次の瞬間、脈打つようにどくんと震えたそれは、一気に収縮してぷちゅりと潰れてしまった。
そのあまりの光景に、さしもの『グレイ』も絶句する。いっそ肉の塊が弾け散った方がまだマシだっただろう。確かな質量を持っていたものがその物質性を奪われたかのように縮んで潰れる様は、酷く不気味なものに見えた。
そんな緊迫した空気の中、『グレイ』が真っ先に行ったのはヨアンの様子を確認することだった。現状『グレイ』が頼れるのは彼しかおらず、その彼がこの状況をどう思っているかが気になったのだ。
果たして『グレイ』の目が捉えたのは、緊迫を顔に張り付けたような表情をしているヨアンの姿だった。
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