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窮地19
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そして僅かな硬直ののち、はっと目を開けた彼は、一瞬混乱したような表情を浮かべたが、『アレクサンドラ』の尽力のかいあってかすぐに状況を理解し、貝に背を向けて走り出そうとした。
だが、そんな少年の行く手を阻むように、向かう先に背の高い男が割り込んできた。
「キョウヤ殿! お待ちを!」
「っ!?」
突然のことに、ひゅっと息を飲んで硬直した少年は、しかし眼前の彼の姿に見覚えがあることに気づき、瞬きをする。
「あ、あ、なた、は……、」
「ギルディスティアフォンガルド王国軍師団長、カリオス・ティグ・ヴァーリアです。以前にもお会いしたことがありますが、覚えておいでか?」
そう言ってほんの少しだけ笑顔を見せたのは、黒い髪に濃い赤色の瞳をした美丈夫。そう、少年の元に単身駆け付けたのは、師団長のカリオスであった。
彼のことは少年も覚えている。確か、金の国での事件のときに金の王と共にいた人物だ。
「は、はい」
「遅くなって申し訳ない。本来ならば軍を率いて騎獣にて駆け付ける予定が、邪魔だと言われてしまい、急ぎ単身馳せ参じた次第です」
「え、じゃ、邪魔、ですか……?」
誰にそんなことを言われたんだ、という疑問を含んだ呟きに、カリオスが小さく首を傾げる。
「おや? 随分と先に向かわれたので、てっきりもうお会いになっているかと思ったのですが」
「……あ、もしかして、えっと、……ヨアン、さん……?」
少年の言葉にカリオスはやや困ったような微笑みを浮かべたが、特に何かを言うことはなく頷いた。
「はい。それで、あの方はどちらに?」
「え、っと、あの、……先手を打たれたからこのままだとまずい、消えるから後はなんとかして、と言って、何処かへ……」
我ながら何も伝わらない説明だと思った少年だったが、どう足掻いてもこれ以上の情報は渡せないので仕方がない。しかし、カリオスの方はそれだけで察するものがあったのか、なるほどと言って頷いた。
「それでは私の役目は、貴方を守りつつあの貝の進行を妨げることなのでしょう」
そう言ったカリオスが、少年を背に庇うようにして敵に対峙する。すっと引き抜き構えられた長剣は、赤の王のものと比べるとやや細く、少年はどうしても不安になる己を抑えられずにいた。
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