アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
蜃気楼の攻防2
-
(正式詠唱を以て発動させたなら、解除できる可能性はある。だが……、)
幻を生んだり消したりすることに特化している幻惑魔法は、水霊と火霊の力を借りる魔法である。対して、カリオスが使える魔法は風霊と火霊が関わるもののみだ。よって、カリオスが使用できる幻術解除魔法も、火霊のみに頼った無理矢理なものしかない。いかに正式な詠唱をしようとも、果たしてそれでこの敵の幻を破れるかどうかは判らないのだ。
(さすがに詠唱をするとなると、キョウヤ殿に気づかれずに発動させることは無理な上に、魔力消費も大きい。……やはり、解除魔法はできる限り使わない方が無難か)
自分自身に致命的な幻術がかけられでもしない限り解除魔法を使うのは控えようと決心したカリオスが、剣の柄を強く握る。
「火霊! 風霊! |魔法憑依《エンチャント》だ!」
カリオスがそう叫ぶと同時に、ばちばちと音を立てて彼が握る剣の刀身に雷が纏わりついた。
(雷魔法……。そうか、確か雷魔法は、火霊魔法と風霊魔法を融合させる魔法だってグレイさんが……)
初めて見る種類の魔法に少年が驚く中、カリオスは雷の剣を大きく横薙ぎに振るった。するとその刀身から雷が放たれ、近場にいた数体の貝に襲いかかった。だが、咄嗟に貝たちが殻を閉じたことで、カリオスの放った雷撃は全て弾かれてしまう。
その光景に、カリオスは僅かに目を見開いた。
「……火霊、俺自身が幻術にかかっているのか?」
静かに問いかけたカリオスの横で、炎がぱちんと弾ける。少年には火霊が何を言ったのか判らなかったが、カリオスの様子を見る限り、彼の問いは否定されたようだ。
「あ、あの、どうしたんですか……?」
少年がおずおずと尋ねると、カリオスはほんの僅かに迷ったような表情を見せた後、口を開いた。
「恐らく、この貝たちは私たちの脳ではなく、この場所自体に投影された幻です。……そうですね、我が国の魔術灯篭が見せる幻と同じようなものだと思って頂ければ良いかと。しかし、そうなると雷が弾かれた原理が判らない。あれが本当に投影されただけの幻なら、先ほどの攻撃で掻き消えるなり攻撃自体が擦り抜けるなりする筈です。それがないと言うことは、っ、キョウヤ殿!」
話の途中で突然叫んだカリオスが、少年に向かって右腕を伸ばした。そのまま少年を引き寄せて抱きしめた彼が、風霊の名を叫びながら横に大きく跳躍する。その直後、彼らが居た場所にカリオスの数倍は大きな何かが降ってきた。それを目端に捉えた少年の背筋に、ぞわりとした悪寒が走る。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
171 / 216