アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
蜃気楼の攻防4
-
そう思い至った少年が顔を青くしたとき、その場にいた貝たちが一斉に殻を開き、ふぅ、とため息のような音を漏らした。幾重にも重なった吐息と共に吐き出された白い靄は、地面を舐めるようにして漂い、そして次々とあの化け物の像を結び始める。まさに、少年の予感が的中してしまったのだ。
「……あの方のご指示がなければ、今からでも私の師団を招集させたいところですね」
やや冗談交じりにそう言ってみたカリオスだったが、発言自体は彼が心の底から思っていることだった。
そんな彼を、化け物たちが一斉に見る。いつの間にか、二人の周りは無数の化け物で埋め尽くされていた。
(俺一人ならばまだなんとかなったかもしれないが、この子を守りながらこいつらが森の外にまで出ないようにするのはほぼ不可能だ。……ならば、)
「風霊、第二師団に指令だ。ある程度離れた位置からこの森を包囲し、森から出てきた魔物がいたら一匹残らず排除しろと伝えてくれ。それから、キョウヤ殿を持ち上げる手助けを」
そう風霊に指示を出したカリオスは、次いで少年へと声を掛ける。
「私の遠距離魔法では敵を倒すには威力不足のようなので、これより直接攻撃に移行します。私や風霊も支えはしますが、できる限り自力で私にしがみついていてください。良いですね?」
そう言うや否や、少年の了承を待たずにカリオスは跳躍した。勿論、少年を右腕に抱いたままである。
突然の浮遊感に思わずカリオスにぎゅうとしがみついた少年をそのままに、カリオスは手近にいた魔物へと剣を振り下ろした。その瞬間、剣に纏った雷が一際強く弾け、化け物の身体が焼き焦げながら一刀両断される。すぐさま剣先を翻したカリオスは、次いでその隣にいた化け物に向かって跳びかかり、横薙ぎに剣を振るった。正確に首を狙った一撃により、化け物の胴と頭が切り離され、その巨体が地面に崩れ落ちる。そうして倒れた魔物たちは、ふわりと滲んで靄になり、空気に溶けていった。
(この人、強い……)
赤の王のように広域に及ぶ強力な魔法こそ使わないものの、正確に急所を狙う太刀筋は鮮やかで、カリオスは最小限の動きで次々と魔物たちを屠っていった。彼は雷魔法と剣による直接的な攻撃を併せることで、雷魔法単独では弾かれてしまった殻すらも見事に打ち砕いてみせたのだ。師団長の肩書は伊達ではないようである。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
173 / 216