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蜃気楼の攻防8
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「……ご、めんな、」
「キョウヤ殿!」
少年が紡いだ謝罪の言葉を遮ったのは、カリオスの強い声だった。思わずびくっと震えてしまった少年をちらりと見てから、カリオスが剣を地面に突き立てる。そして彼は、左腕を空へと突き出した。
「風よ 炎よ いま一筋の雷光を喚び 全てを呑み込む波となれ! ――“雷撃波”《ガル・ボルト》!」
刹那、高く挙げられたカリオスの掌で小さな雷がぱちりと弾けたかと思うと、バチバチと激しい音を立てて彼の足元から雷が膨れ上がった。そしてそれは、そのまま彼を中心として凄まじい勢いで波状に広がり、瞬く間に周囲の魔物を呑み込んでいった。
辺りには雷がもたらす轟音と魔物の悲鳴が響き渡り、見る見るうちに魔物たちが靄になって掻き消えていく。木々をも焼き倒す雷の波は辺り一帯を焼き焦がして進み、それが収まる頃には、少年とカリオスの周囲にいた魔物の半数以上が消失していた。
その威力に、少年は息を呑んだ。カリオスは広範囲に渡る魔法が使えないのかと思っていたのだが、その考えは間違っていたようだ。
そんな少年を改めて見下ろして、カリオスが微笑む。
「どうか謝罪などなさらないでください。貴方に謝罪されてしまうと、私は本格的にギルヴィス王陛下からお叱りを受けてしまう。貴方はギルディスティアフォンガルド王国の民で、私は国軍の一員なのですから、私が貴方をお守りするのは当然のことです。……エインストラだのなんだのという話は二の次なのですよ。私の敬愛する陛下がそれを望まれる以上、私はこの命に代えても民を救うことが役目。ならば、貴方が私に守られることで負い目を感じることなどないのです。キョウヤ殿は、紛れもなくギルディスティアフォンガルド王国の国民なのですから」
そう言って笑ったカリオスに、少年は胸の奥が掴まれるような不思議な感覚を覚えた。その感情の正体が何なのかはよく判らなかったが、それでも、カリオスが少年に対してこの上ない配慮をしてくれていることは判る。彼は、エインストラという特殊性故ではなく、この国の民であるから少年を守っているのだと、そう言ってくれているのだ。
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