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黒の暗殺者6
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なんでもないことのように肯定してみせたヨアンに、ただでさえ良くなかった少年の顔色が更に悪化する。まさに顔面蒼白になってしまった彼は、何度かヨアンを見て口をぱくぱくとさせた後、ばっと這いつくばって地面に額を擦り付けた。
「も、申し訳ありません! 国王陛下とは知らず、失礼致しました!」
国王に対して頭を下げなかった上にその名を気安く呼んでしまったとなると、不敬罪を言い渡されても不思議ではない。赤の王が気安い性質なので感覚が鈍ることもあるが、一国を統べる相手と接するならばそれ相応の対応というものがあるのだ。
この程度の謝罪で許されるとは到底思えないと少年は酷く怯えたが、そんな彼の様子にヨアンは面倒臭そうな表情を浮かべた。
「別に良いよ。俺、そういうの気にしないから。あんまり頭下げられてもめんどくさいし。だからさっさと顔上げて。エインストラだけじゃなくてあんたもね」
あんたというのは、恐らくカリオスのことを指したのだろう。それを証拠に、カリオスが苦笑と共に顔を上げる気配がした。それを受けて、少年の方も恐る恐る顔を上げる。そうして見上げたヨアンの表情にはこれといった変化はなく、どうやら彼は本当に気にしていないようだった。
二人が叩頭を止めたことに満足したのか、それで良いといった風に頷いたヨアンは、次いでカリオスに視線をやって口を開いた。
「取り敢えずあんたはさっさと傷の手当てした方が良いよ。その背中の傷、けっこう深いみたいだし」
さらっと言ったヨアンに、カリオスが焦ったような表情をするのと、多少良くなりかけていた少年の顔色がまた悪化するのがほぼ同時だっただろうか。
「す、すみません! 僕なんか庇ったから……!」
気が動転していて頭から飛んでしまっていたが、カリオスは大怪我を負っているのである。こんなところで悠長に話している場合ではないだろう。
今度はカリオスに向かって土下座しそうな勢いの少年に、カリオスが慌てて首を横に振る。
「いいえ、キョウヤ殿が気にすることはありません。私の鍛錬不足が招いたことですから」
そう言って少年を落ち着けさせてから、カリオスが恨めしそうな目でヨアンを見る。
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