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黒の暗殺者10
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「しかし、あの魔物はヴェールゴール王陛下が一度引くほどの脅威だったのでしょうか? 陛下が直接的な戦闘を好まれないのは存じ上げておりますが、それでもわざわざ一度撤退する必要があったとは思えません」
訝し気にそう言ったカリオスに、ヨアンはすっと目を細めた。
「……念のため、ね。帝都にヤバいのがいてさ。あれが一枚どころか何枚も噛んでるみたいだったから。まあ、その辺は次の円卓会議で話すから」
暗に面倒だからそれ以上は訊くなと言うような態度のヨアンに、カリオスもそれ以上問いただすような真似はしなかった。
「……あの、カリオスさんが一人で僕を助けに来てくださったのは、ヴェールゴール王陛下に言われたから、ですか……?」
少年は出来る限り問いの本質から遠ざかるような言い方を選んで発言したが、どうやらヨアンには正しく伝わってしまったようで、彼はちらりとカリオスを見てから口を開いた。
「言いたいことはなんとなく判るよ。あのまま師団を率いて来てれば、この師団長がここまで大怪我することはなかっただろうね。でも、そんな大所帯で駆け付けたら、いくら敵が馬鹿だって気づくんじゃないかな。で、さっさとあんたを連れて逃げられちゃってたかも。誰も追って来てないと思い込んでたからこそ、ここで悠長にあんたをいたぶって遊んでたんだろうし。あとはまあ、そうだなぁ」
やはりカリオスに視線を投げたヨアンが、肩を竦めた。
「師団員が何人か死ぬのと、師団長一人が重症を負うの、どっちの方がこの国にとってでかい損失かって話じゃない? 俺が赤の王から受けた依頼はエインストラの護衛だけど、ついでに余裕があれば金の国のことも気遣ってくれって頼まれてたから」
相変らず的を射ないような言い回しをしたヨアンだったが、その言葉が意味するところを正確に把握できたカリオスは、改めて深々と頭を下げた。
「そのご判断に、深く感謝申し上げます」
「いらないよ。感謝するなら報酬支払う赤の王にしたら?」
そう言ったヨアンに、少年が驚いた顔をした。
「えっ、お金、取るんですか……?」
思わずといった風に口をついて出た言葉に、ヨアンは飽きれた顔をする。
「何言ってんの。当たり前でしょ。俺はただ働きなんて嫌だよ」
そもそも帝国関連のことはリアンジュナイル大陸全土に渡る問題なのだから、それに関する対抗策で金銭のやりとりが発生するとは思っていなかったのだが、そんなことはないらしい。
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