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収束1
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騎獣に乗って到着したカリオスの部下、王軍第二師団に属する中隊の面々は、すぐに被害状況の調査に入った。
まずは少年の無事を確かめ、彼に掠り傷程度の怪我しかないことを確認した兵は、それでもやや大袈裟なくらいに手当を施してくれた。勿論少年は、自分はいいからカリオスの方を手当てして欲しいと主張したのだが、カリオスと団員たちが口を揃えて一般市民である少年が最優先であると言うので、大人しく受けることにしたのである。
結局、人的被害はカリオスがやや重傷を負った程度で済んだようだったが、治療を受けながら耳に入ってきた会話から察するに、森への被害の方は少々深刻らしい。魔力のない少年にはよく判らなかったが、森一帯に穢れのようなものが広がっているそうなのだ。どうやら、ヨアンに倒された魔物が残した怨嗟が呪いのようなものに変質し、ゆっくりではあるが森を侵食し始めているらしい。
「まあ、このまま放っておいたらこの森は死ぬだろうね。そうなる前に白の王あたりにどうにかして貰った方が良いよ。こういうのはあそこの領分でしょ」
近くの木に触れてそう言ったヨアンは、これだから魔導は嫌なんだ、と小さく呟いてから巨大な貝の遺骸がある方へと足を向けた。そして、遺骸の前で足を止め、その場に膝をつく。少しの間じっと貝を見つめていた彼は、ふいに右腕を伸ばして、でろりと地面に垂れている軟体部にそっと触れた。
まるで慈しむような手つきで何度か掌を滑らせたヨアンの唇が、僅かに動く。少年の位置からではその小さな声を聞き取ることはできなかったが、彼にはヨアンの口が、ごめんねと動いたように見えた。
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