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お茶会5
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「すまない、ギルヴィス王。スオウ殿はどうにも自由なお方でな」
こそっとそう謝罪してきた赤の王に、ギルヴィスは首を横に振った。
「いいえ。グランデル王国の賓客であれば、我が国の賓客も同然ですから」
どうやら金の王に怒る様子はなく、周囲の近衛兵たちも目を剥いたようではあったが、手を出す気はないようである。しかし、少年の方は落ち着いてなどいられなかった。
「お、お師匠様、も、もう少し、遠慮を、」
「うるせぇなぁ。お前はいつから師匠に指図できるほど偉くなったんだ? ん?」
「え、ええ……」
青褪めた少年がわたわたしていると、その隣に着席した赤の王がその頭を撫でてきた。恐らく赤の王本人は落ち着かせようとしたのだろうが、突然触れられた少年は驚いてびくっと肩を跳ねさせたので、逆効果である。
だがそんなことは気にしない赤の王は、少年の頭を撫でたまま口を開いた。
「まさかキョウヤがスオウ殿と知り合いだとは思わなかった。一体どういう関係だ?」
「え、あ、えっと、……お師匠様は、僕に刺青を教えてくれた、先生、です」
「ほう」
少し驚いた顔をした赤の王に、蘇芳が肩を竦める。
「つっても世話をしたのは数年だけどな。死にかけのところを拾って、生きる上での最低限を仕込んでほっぽり出したから、会うの自体……、…………何年ぶりだ?」
首を傾げた蘇芳に、少年が小さく声を出す。
「五年ぶりです」
「ああ、そんなもんか」
大して興味がなさそうに言った蘇芳が、女官の運んだ酒をぐいっと煽った。酒瓶から直接呑むのはどうなんだと思った少年だったが、彼女に何を言ったところで無駄なのはよく判ったので、そっと目を逸らすだけに留めた。
「なるほど、つまりスオウ殿は、キョウヤの命の恩人なのだな」
確認するように見て来た赤の王に、少年がこくりと頷く。
「お師匠様が、ひとりでもやっていけるようにって、僕に刺青を教えてくれたんです。あのお店も元々はお師匠様のお家だったんですけど、貸して貰いました」
「まあ長生きしてる分、拠点なら至るところに持ってるからな。ひとつくらいは良いさ」
そう言った蘇芳が、また酒を煽る。どうにもお茶会とは言い難い光景になってきたように思えるのは、少年の気のせいではないだろう。
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