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べっとりまとわりつく様な空気
灰色の空から降り続いている雨
かと思えば、蒸し風呂の様に暑くなる
アスファルトの照り返し 雨上がりの匂い
俺はこの季節が大嫌いだ
ただでさえだるい日常が更にクソだるくなる
去年の春から大学生になり、晴れて親元から解放されて自由を満喫出来ると思ったけど
どこにいても、何をしてもだるいのは何も変わらない
そして、梅雨のこの空気
じめじめして、体の中から腐りそうだ。
何もかもつまらない
だるい。
通学や通勤の重なる朝の電車は文字通りの満員電車で、俺のだるさを底上げするに余りあるものだった。
起きぬけに降っていた雨は小降りになりかけていて、
じわじわと気温が上がり始めている
電車内は冷房が入ってはいるものの、人の熱気でぬるい空気が充満していた。
入口近くの手すりにもたれて、ひらすら駅に着くのを待つ
ガタン、と車体が揺れる度に、密着した体が押されて苦しい
ふと、腰のあたりに違和感を感じた。
くっそ、最悪だ、
思わず口に出しそうになる
腰のあたりに当たっていた感触が、そのまま辿る様に下に移動して、今度はケツを撫でる様な動きになった
後ろから、耳元に生暖かい息を吹きかけられる
気色悪い
やめろ、離れろ
ぎゅっと目をつぶり耐えていると、駅の到着を告げるアナウンスが流れ、
俺は停車した車内から飛び出す様に降りた。
「あっはははは!!」
「なんだそれ、痴漢されてんのかよウケる」
大学の構内に笑い声が響く。
「川島ぁ、おっさんにケツ触られて興奮したー?」
川島 恵(かわしま めぐみ)
それが俺の名前だ。
食っても肉の付かない体型に、顔も母親似の女顔で、名前まで性別不明だとよくからかわれた。
「するか、くっそ野郎」
更に高く響く笑い声。下品極まりない。
駒場と芳賀、だいたいいつもだらだらと一緒に過ごしている面々だ。
「お前に痴漢とか、無理無理、有り得ねー」
「っるせーな、相手してやっからチンコ出してみろ」
「無理!萎える、しぼむ!」
「ぎゃはははは!!」
余りにうるさい連中に、構内の他生徒が避けて歩く。
そりゃあ、そうだ。
俺も含めて、ここでつるんでる連中は皆、総じてただのクズ
中高とろくでもない事ばかりしていた俺は、大学に進学して
ただのクズから酒クズにグレードアップし
同じ様な連中とつるんでる
毛色の似たような奴らの中にいると、自分を異物の様に感じずに済んだ。
「なぁ、シマ、いい事考えた」
ニヤニヤしながら言ったのは真木 健 (まき たける)
大学に入ってすぐにつるむようになったヤンキー崩れ
金髪のツーブロックに、耳たぶには大きな風穴、どこから見ても立派なクズ。
「お前、エサんなれ」
その言葉の意味するところを知るのは、そう先の事でもなかった。
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