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「おじさーん、俺の大事なトモダチの事触ったでしょ??」
おじさん、と呼ばれて腕を掴まれたサラリーマンらしい中年の男は、真木の容貌を見るなり焦って逃げようとした。
「トモダチ、すげー怖がっててさぁ。トラウマんなってもう電車乗れねーかもしれないんだわ」
「っ……なんの事だか分からない」
何とか腕を振りほどいて逃げようとする男に、更に詰め寄る真木
お前の方がよっぽどトラウマになりそうだ。
「慰謝料払ってよ、ね?」
そう言って、男の胸元を掴んで引き寄せる真木
俺はそれを、少し離れた場所から眺めていた。
人気の少ない、駅の地下通路
さっき電車の中で俺に痴漢してきた男が、真木にたかられている。
真木の考えた〝いい事〟がこれだ。
俺をエサにして、寄って来た奴から有り金を巻き上げる
そうそう男に痴漢する奴なんかいるわけない、とたかを括っていたものの
結果はこの通り
複雑極まりない事に、釣りは毎回なかなかの成果だった。
「やった。新しいATMゲットー。」
スマホを片手に戻って来た真木の肩越しに、走って逃げて行った男の姿が見えた。
「電話帳開かせて身元押さえちゃったー」
三白眼を更に細くさせてニヤニヤしている
「お前、最悪」
「シマぁ、お前のおかげだよ、ありがとなァ」
頭をガシガシと撫でたかと思うと抱き着いてくる。
「やめろ、気持ち悪い」
地下通路のカビ臭さに混じって、青臭い香水の匂いがする
それにほんの少し、胸がざわつくのを覚えてすぐに頭を振った。
「レモンサワー2つとー、」
「あ、俺ハイボール」
じゃ俺も、と芳賀と駒場に続いて
アルバイトらしい、たいして歳の変わらなそうな店員にオーダーを告げる。
各々仕切られた半個室の焼肉屋
店内はあちこちから似たような笑い声や、騒々しい話し声が響いている
タバコの煙が、薄暗い照明を更に曇らせていた。
俺の隣には真木、七輪の埋め込まれたテーブルを挟んだ向かいに駒場と芳賀が座っている。
「川島、お前なんで俺が焼いた肉まで片っ端から食ってんだよ!」
「俺のおかげで肉食えんだから俺に感謝しろ」
「うるせぇ、自分で焼け!」
俺と駒場のやり取りに、芳賀が あはは、と盛大に笑い声をあげる
「そうだぞ、お前ら俺とシマに感謝しろよー。」
隣に座った真木が、俺の肩を抱くようにして他の2人に言った。
「真木ありがとなー!」
「真木、お疲れー。」
「お前ら俺を無視すんな」
「シマが体使って稼いだ金で飲んでんだからな、感謝しろよお前ら」
「ぶっ…、その表現おかしい!」
駒場の横槍に続いて、ぎゃはははは、と響く笑い。
七輪の熱に炙られて、ニンニクやら酒やら汗臭さやらがごちゃごちゃになって、地獄絵図の様なむさ苦しさになっている。
いつまでも退かない腕に、居心地の悪さを感じて手で押し退けた。
「暑い。」
「あは、わりーわりー。」
少しも悪いなどと思ってない風に言う真木が笑いながらやっと離れる
俺はタバコが煙たくて顔を背けた。
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