アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3
-
昔から、何をしていてもだるかった。
集団の中にいると、自分だけが他と違くて
〝異物〟の様な感じがして、息苦しかった。
気がつくと似たような奴らと一緒に、ろくでもない事ばかりしていた。
中学では、学校をサボってゲーム三昧、万引きしたり、カツアゲしたり、高校に入ると、今度はそれに色事がプラスされて。
皆、部室をラブホ代わりにしたり、女の部屋に入り浸ったり、猿みたいに遊びまくっていた。
クズの中にいるのは心地良い
妙に安心出来た。
ただ、何をしても消えないだるさに、焦燥感の様な物を感じてもいた。
このまま、
ずっとこのままなのか。
いつまでも、この灰色の箱の中の様な世界は変わらないのか。
息苦しい。
その日も電車は満員だった
例に漏れず、通勤や通学の人の群れに揉まれていた。
蒸し暑い。まとわりつく空気が気持ち悪い。人の熱が鬱陶しい。
苛立ち紛れに手すりを握りしめた。
ポケットのスマホを取り出し、画面を開こうとして後頭部に鋭い痛みを感じた
「…いっ…て」
頭を動かそうとすると更に痛い
訳が分からずに振り向こうとしたら、後ろから聞き慣れない声がした
「あ、待って、動かないで」
「……え」
頭を動かすと、引っ張っられて痛い。
落ち着いてゆっくり見てみると、俺の髪が後ろに立っていた男のシャツのボタンに絡まっている様だった
こんな少女マンガみたいな展開あってたまるか
くっそ、イライラする
「待って、今取るから」
背の高い、スーツ姿の男はそう言って俺の髪に手をかけた
髪が切れるのを覚悟した瞬間
ぶちっと小さい音がして、引っ張っられる感覚が無くなった
男の手には千切れた糸がついたままのボタン
「取れた。大丈夫か?」
「……え、あ…。はい。」
すいません、と会釈して俺はすぐに自分の足元を見た。
背の高いスーツ姿の男は、見るからに仕事の出来そうなサラリーマン風で、顔立ちも整っていた。
何もかもが自分とは正反対で、そこにいるだけで惨めな気にさせられた。
最悪だ
こんな事ならサボれば良かった
駅に着き、開いたドアからまるで逃げるようにして降りた。
「なぁ、川島、合コンすんだけどさ」
「行かない」
スマホをいじりながら、芳賀の言葉を切り捨てる様に言った。
昼時の学食は生徒で賑わっていて、あちこちでグループが固まって食事していた。
「何でだよー、トモダチだろ俺らー。お前いねーと女子が来ねーんだよぉ」
「エサにする気満々じゃん」
イライラする
どうしようもなくイライラする
朝の電車での事がずっと、モヤモヤとまとわりついていた。
「無理無理、お前来るってもう言っちゃったもん俺」
「行かない。」
キッパリと断ってオムライスを口に運ぶ。
「なぁー、頼むってマジで。」
両手を拝むように合わせて俺に頭を下げる芳賀、それを無視して黙々と昼飯を食う俺。
「ならお前の好みの女用意するから、どういう系か言ってみ」
「……は?」
思わずスプーンを持つ手が止まった。
「あはは、芳賀、だめだって」
駒場が騒々しい横槍を入れてきた。
「こいつ、バイだから野郎も用意しねーと」
「あ、なんだ。そうなら早く言えって!何系?ガチムチ?ガテン系?」
ぎゃははははと笑い声が上がった
瞬間、
ガシャン!!と食器が派手な音をたてた
俺は耐えきれなくなって、気付くと力いっぱいテーブルを叩いていた。
倒れたコップから麦茶が零れて、氷がカラカラと転がった。
周りの生徒達が一瞬静まりかえる
「……鬱陶しい、」
腹の底から湧く様な苛立ちを、そのまま絞り出した様な声に、芳賀も駒場も押し黙った。
「お前らいい加減にしろよ、」
なぁ?、といつの間にか横に立った真木が、俺の顔を覗き込んでそう言った。
少し視線を上げると、その口元は口角が上がっていて、
俺はその顔を直視する事が出来なかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 23