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「ガイアさん、一応聞いときますけど、今はどこに向かってるんです?」
振り返ったガイアはよくぞ聞いてくれた、と言いたげだった。
「最寄りの聖剣のダンジョンだ。『聖剣 場所』で検索すりゃいくらでも出てくるもんだな。転送魔法使ったからもうすぐ着くぞ」
「……その剣の名前は?」
「アロンダイト」
「また有名どころ出してきましたね」
「銘柄って大事、うん。鎧もマントもブランド物に変えたら女の食いつきが全然違う」
ガイアほどの手練れになるとブランドの評価は女で決めている。女は単位だという。
「それだけ手に入れるのは難しいってことが分かりませんかね。ほら、これが現実ですよ」
キースが顎でしゃくった先には、別の勇者一行が野営をしているところであった。ぐったりと横たわる勇者らしき男のぼやきが聞こえてくる。
「くっそぉ……アロンダイトどこにあるんだよぉ。辿り着くこともできないなんて」
皆一様にダウンしており、医者の心得があるらしい僧侶がかいがいしく治療をしている。他でもない聖剣アロンダイトのダンジョンに挑んだことでパーティが壊滅したのは明白だった。
「聞きました? 場所すら分からなかったんですって。複数人のパーティであの有様なんです。あなた一人で潜るなんて無謀ですよ」
「御託はいいからついて来い。置いてくぞ」
ガイアはというと、躊躇する素振りを一切見せずに入り口をくぐった。
「えっ、転送魔法使うんですか?」
「ああ」
「ここで使っても意味ないですよ。転送魔法の使用条件忘れたんですか? 一度でも来た所じゃないと飛べなーー」
「はい、移動完了。ここラスボス手前の空間な」
「うそ、なんで……?」
キースは絶句した。慌ててマップを見るも確かに一瞬でダンジョンの奥地に到達していたのだ。荷物持ちという役割を忘れ、荷物を落としてしまう。
「今のはどんなイカサマですか」
「真っ先に不正疑われんのかよ。ひっでえ! 簡単なことさ、ここには来たことあるんだ。つかすでに攻略済みだったり」
「えーー!? ひ、一人でですか」
「まさかぁ! その辺で寂しそーにしてた方々にご同行してもらったんだ。こうやってはだけて『俺のマントの中、空いてるよ』ってやれば女も男も引く手あまたでさ、先着順にした」
「一世代前の色仕掛けに引っ掛かる人がいるんですね……でも待って下さい、ダンジョンの最奥なのにアロンダイトどこにも無いですけど」
「そこで手掛かりになるのが、こっちの紙の地図。ここの神殿はどの階層に行っても明るいからこっちで照明を準備する必要はない。なのにここにだけぽつんと置いてある松明、なんか気にならないか」
「……もしかして炙り出し?」
「だと思うぜ。これをこうしてーーほら、ビンゴ」
古地図に滲むように新たなルートが現れていくのを、キースは息を飲んで見守った。
「この古地図は入り口付近の宝箱から手に入れた物だ。文明が発達して紙の地図なんか誰も使わないが、だからこそ誰も解けない」
(やっべぇ、俺かっこよすぎ。キースに惚れられちまう)
(不覚にもガイアさんかっこいいとか思っちゃったけど、自分で自分のことかっこいいって思ってそうだからノーカン)
ガイアの考えていることは全てまるっとお見通しだった。
「新たな通路を見つけただけであって、また攻略しなきゃいけないことに変わりは……何してるんです。着替え?」
「これか? 透明マント。これ着てステレスになって、聖剣のとこまでは一戦もしないで行く」
「なんて姑息な!」
キースの非難もどこ吹く風。ガイアはいそいそと着替え中だ。
しかしガイアのとった作戦というのは勇者カレッジでも教わるれっきとした戦法の一つであった。いちいちステレスの魔法を使用してMPを消費するより、身につけるだけでいつでも好きなだけ透明になれる利便性から現在飛ぶような売れ行きなのだという。生産数が増え、リーズナブルな物も出回るようになったことで、勇者や騎士は最低でも一着は持ち歩く必需品となった。ーー統計によると世のアサシンも愛用し始め、犯罪率も跳ね上がったそうだが。
手早く着替えを終えたガイアはキースを手招きする。二人で透明になり、ゆっくりと前進する。
「こんな超高級装備、どうやって手に入れたんですか? お金は僕が管理してるし、宵越しは無一文になってるガイアさんに手に入れられる余地なんて万に一つもないのに」
「金なら女に貢いでもらった」
「……」
「女ってのはこっちが貢いだら貢ぎ返してくれる生き物なんだよ。株よりも遥かに投資しがいがある。ちなみに女は金、男は装備をくれる。透明マントも一昨日寝た男にもらった。俺の前じゃ男も女もちょろいぜ」
「クズ野郎」
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