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『相沢 氷雨、自身初となるアルバムが9月10日にリリース!』
都心の大きなモニター画面。
そこに映るのは、今世間を騒がす大スターの姿。
「相沢 氷雨だー!めっちゃかっこいい……!」
「絶対アルバム買うもんね!」
周りからは女子たちの黄色い声。
頬を赤く冷め、興奮気味の声、まるで彼に本気で恋をしているかのようだ。
……まあ、たしかに顔はかっこよくないことも……ない。
俺はじっと睨みつけるような視線でモニターの中にいるそいつを見た。
キラキラの笑顔。
眩しく輝くその姿を見れば見るほど、俺の知らない遠い存在のようだ。
そのとき、スマホがポケットの中でバイブ音を鳴らせた。
それを取り出し画面を見れば、表示された相手の名前を見て俺は顔をしかめた。
「……もしもし」
『あっ、伊織?俺』
「そんなの、画面に名前が出てるんだからわかる。で?いったい何の用だ、氷雨」
俺が溜息をつきながらそう言うと、スマホの向こうで「ははっ」と笑う声が聞こえた。
『今日、仕事が長引きそうで帰りが遅くなると思う。でも飯は家で食うから』
「わかった。頑張れよ」
『え、もう切るの?』
俺が通話を切ろうとすると、画面越しに不満そうな声が聞こえた。
俺はまた溜息を吐く。
この男の、わけのわからん我儘はどうにかならないのか……?
「もう用は済んだだろう。俺は今仕事中なんだ」
『えー外にいるんでしょ?電話も取れてるし、嘘じゃん』
「今から取引先に向かうところなんだ。俺だって暇じゃない。切るぞ、じゃあな」
向こうで『おい、待てよ!』なんて声が聞こえたが、有無を言わさぬよう強制的に通話を終了した。
家に帰ったらあいつの不機嫌な顔が目に浮かぶな……
面倒臭いことになりそうだ。
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