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ずっと考えていた。少女を手に入れる方法を。
「貴族」という権力をつかってしまえば、少女のような花売りは文句の一つも言えないだろう。だが、そこには「心」がない。少女の何もかも全て、自分のものにしてしまいたかった。
要するに、恋を成就させたいのだ。
そのための方法である。
「私はエドガー・ド・ロベール。画家をしている。今日は君に絵のモデルをお願いしたく、声をかけたんだ。」
どうやら、自分は奥手らしい。「少女に絵のモデルを頼む」これが、エドガーが考えに考えた策であった。
乱暴に奪いたい本能はあるものの、意外と心は小心者である。ゆっくりと関係を紡ぎたいのだろうか。自分でもよくわからない。
ただ絵が描けない現状、恋とは関係なくともこれは名案である、とも思うのだ。
「ぼ、私をモデルに…?!嬉しいお話ですが…」
眉をハの字にし、少女は困惑の表示を浮かべた。そして迷ったように言った。
「実は、ここへ売りにくるのは小遣い稼ぎのためなんです…。普段は爵位様のバラ園で働いていて…」
ぽつりぽつりと、戸惑いながら続けた。いきなりモデルの話を出されたら、困惑するのは当然だろう。
「モデルのお話はとても光栄です。ですが、仕事があるのでお受けし難いのです…」
エドガーが想定していた大凡は当たっていた。少女の身なりを見る限り、そんなにいい暮らしはしていない。バラ売りだけでは生計は立てられないだろうから、これは副業だろうと、考えてはいたのだ。
「一回の報酬は先日渡した二倍渡そうと思っている。…ここ最近、全く絵が描けなくてね、人助けのつもりで引き受けてくれないだろうか?」
「そ、そんなに…!いえ、でも…」
「日曜だけなら、どうだろうか?」
一度は断られると思っていた。エドガーは冷静を保ちながら、淡々と言った。
「日曜日だけなら…。私にモデルなんて務まるでしょうか?このように、私は貧しい庶民ですし…」
少女は手を触りながら、申し訳なさそうに言った。
「マドモワゼル。君にしかできないんだ。引き受けてくれたこと、心から感謝する。」
エドガーは承諾をもらった嬉しさを押し殺し、その手を包み込むように握った。
「来週の日曜、オペラ座前で落ち合おう。馬車で迎えにくる。」
「わかりました。お迎えまで、大変恐縮です…。よろしくお願いいたします。」
「私が頼んだのだから当然だ。こちらこそよろしく頼む、美しきマドモワゼル。」
エドガーは、少女の手を取り甲にキスをした。
「あ…バラ、もらってください。」
少女は大きく目を見開き、何か言いたげに唇を動かした気がしたが、笑顔でバラの花束を差し出した。
「ありがとう。では、来週。」
エドガーはバラを受け取ると、空いている少女のカゴにチップを入れた。そして、その場を立ち去った。
(今日はオペラ座に寄らずに帰ろう)
自分の馬車は一度返してしまっているため、新しくつかまえた馬車に乗り込んだ。
馬車の中で揺られながら、今日はとてもいい日だったと思い返した。
少女を思うと体が熱くなるものの、目の前にするとなぜだか、理性がよく働いた。
(少し強引だったかもしれない)
どこかでそう思うものの、自分にはこの策しか浮かばなかったのだ。多少強引でもしょうがない。
エドガーは窓から帰路を見つめ、ぼんやり考えた。
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