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馬車の中はゆったりとした時間が流れている。
二人の間に会話は無く、穏やかな静寂が二人を包み込む。
少女は、動きは落ち着いて見えるも、表情や目の動きが緊張を物語っている。
エドガーは特に話しかけることはせず、馬車の音に耳を傾けながら目の前にいる美しい少女を見つめた。
美しく、それでいて少女特有のあどけなさが可愛らしい。女神、というより天使の方がしっくりくる。
少女は見つめられているのに気づいたのか、恥ずかしそうに目を伏せた。その仕草は生娘らしくて可愛い。
そうこうしているうちに馬車は人里を離れ静かな森へ入り、いつの間にか邸宅に到着していた。
門が開き、馬車はゆっくりと屋敷前で止まった。
「おいで、ここが私の家だ。」
エドガーは先に降車し、少女の手を取り先導した。
「立派なお屋敷です。」
「君に褒められるなんて光栄だ。アトリエは二階にある。行こう。」
少女の手を軽く握り、二階にあるアトリエへ向かう。
屋敷の中に入ると使用人が物陰から物珍しそうに見つめていたが、気にせずに案内した。
「長旅で疲れただろう。休んでくれ。」
少女を部屋のソファに座らせ、エドガーは着ていたコートを脱いで椅子の背もたれに掛けた。
アトリエとして使っているだけあって所々汚れてはいるものの、比較的綺麗に使っていることもあり、客人を招き入れても申し分のない部屋である。
屋敷の中で一番広いこの部屋は、西日が差し込み豊かな自然が見下ろせる大きな窓がついている。人の気配がしない景色は、エドガーにとって言うまでもなく癒しそのものであった。この部屋は使用人ですら入るのを拒否している、完全なプライベート空間だ。
自分の本当に好きなものしかないこの部屋に、バラ売りの美しい少女がいる。エドガーは今、幸福に満ち溢れていた。
「とても素敵なアトリエですね。太陽の光が差し込んでいて…」
少女はアトリエ内を見渡し、囁くような声で言った。そんな少女をエドガーは、紅茶を入れながら横目で見つめた。
「ありがとう。お気に入りの部屋なんだ。」
この部屋を肯定されることは、エドガーにとって自分を肯定されるのと同等であった。エドガーは少女の前に座り、入れた紅茶を少女に差し出した。
「ご丁寧にありがとうございます。わぁ…とてもいい香りの紅茶ですね。こんなに素敵なフレーバーティ、頂戴してもよろしいのでしょうか?」
「私一人じゃ飲まないから。是非召し上がってくれ。」
リンゴとバラの花びらが入ったフレーバーティは、今日飲むために買って着たものだ。程よい甘さと香りが楽しめて、昔は好きで飲んでいたものだった。
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