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部長に電話があり、ようやく解放された山野は、病棟へと逃げ出した。
「あ、山野先生。」
「昨日の戸町さんは?」
緊急オペをした戸町さんのことが気になっていた。
盲腸炎を拗らせまくって、死ぬ手前になっていたのだ。
ナースステーションでザッと今朝のバイタルを確認すると、ついでに回復室にいる患者の様子を見た。
若いからか、もうピンピンしていた。
通常、術後はベッドを寝かせた状態で、患者は痛みでピクリとも動けない。
だが、戸町さんは寝かせた状態は逆に腰が痛むと言って、少し背中を上げていた。
「今日は安静だからね。」
「はい。」
顔色も悪くない。
状況を確認すると、山野は午後から手術式の説明をする予定の患者のカルテを確認するために医局へと戻った。
「甲斐くん、来てたんだ。」
「はい!山野先生、お待ちしていました。」
MRである甲斐くんの笑顔を見て、部長から言われて腐っていた気持ちが薄くなった。
やっぱ、可愛いなぁ。
「先生、この前ご紹介した機器はいかがでしたか?」
「うん、良いなって思うよ。でも、使ってる病院がまだ少ないよね。」
同期に確認したが、まだ使っていないと言っていた。
それでは、なかなか部長まで話すきっかけにはならない。
そう言うと、甲斐くんはほっぺたを赤くして、いくつかの大学病院の名前を挙げた。
「へぇ。いつぐらいに納品するの?」
「えっとですね、早いところで、」
一生懸命で、可愛いなぁ。
一緒にメシでも食ってみたい。
ふと、名案を思いついた。
「・・・ね、それってさ、個人病院とかはどうなの?」
「個人病院様は、サイズを小さくさせてオペ室の邪魔にならないように改良したものがありまして、」
上目遣いで、こちらの反応を探り出した。
開業するんじゃないかと感じたようだった。
「・・・それ、今度、パンフレット持ってきてよ。」
甲斐くんの目が煌めいた。
「いま持ってます!えっとですね。」
カバンを探る、その手を掴んだ。
「それ、さ。後でもらっていい?」
びっくりして硬直した甲斐くんに、言い聞かせるようにゆっくり話した。
「甲斐くんに相談したいことがあるんだよ。」
わんわん!
わんわん!
ぶんぶんと振り回す尻尾が見えるようだ。
豆柴のような可愛い反応に、山野はほんのり胸が痛んだ。
「わたしでお役に立てるのなら、いくらでも!!」
「じゃ、今夜、食事をしながら話そう。」
そう提案すると、甲斐くんは嬉しそうに頷いた。
「はい!」
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