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可哀想に、震えている。
山猫からパクリと食べられるんじゃないかと、警戒しているのだ。
「ご、ごめんなさい!」
「いや、いいよ。」
ロール状のキッチンペーパーを持ってきて、床を拭いた。
怯えた甲斐くんを見るのが辛くて、すでに水気の無くなった床を拭き続けた。
「俺が男が恋愛対象って言ったから怖いんだよな?」
ごめんな、余計なことを言った。
ほんの少し、ほんの少しだけ夢を見てしまったのだ。
「や、えっと、ちがくて。」
否定の言葉に、手を止めて甲斐くんを見上げた。
ただ単にその場しのぎの嘘をつくつもりなのか、見極めたかった。
「ぉれ、恋愛初心者だから、よく、分かんなくて。」
・・・夢を見てもいいのだろうか。
甲斐くんを挟むようにして、ベッドに手を置いた。
呼吸音しかしない空間で、ギシッとベッドが軋む音が生々しく響いた。
「・・・初心者って、どういう意味?」
甲斐くんが、自分を守るように両手で胸を押さえた。
「ぉれ、童貞・・・ッ。」
絞り出すような声に、可愛さが募った。
「へぇ。・・・そんなカミングアウトしてくれるんだ?」
「んっ。」
希望を持っていいのだろうか。
「可愛い。・・・俺のこと、気持ち悪いわけじゃないんだね?」
「んっ。」
小さく頷く顔にキスしたくて、顔を近づけた。
「ね、こっち見て。」
恐る恐る目を開けた甲斐くんは、慌ててまた目を閉じた。
ああ、可愛い。
可愛くて、倒れてしまいそうだ。
思わずその肩を抱きしめた。
甲斐くんの石鹸の香りが鼻腔をくすぐって、中学生みたいに緊張した。
「ね、それってさ・・・、イイって事?」
俺の事、受け入れてくれるってことかな?
「ね、甲斐くんもこっち側だよね?」
男性のことが好きな、男性。
怯えているのか、緊張しているのか。
甲斐くんの震えは治らなかった。
「ね、付き合おうよ。」
大切にする。
すごく、大切にする。
ね、だから。
「返事は?」
「んっ。」
腕の中で頷いた甲斐くんの体を、嬉しさのあまり、ギュッと力一杯抱きしめた。
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