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加害
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てかいつまで触ってんだ。不審に思った時……そっと耳元で囁かれた。
「チャック、ちょっと開いてる」
嘘っ。恐る恐る視線を下げると、確かにちょっと空いてた。ちょっと……いや、ちょっとじゃない。オブラートに言ってくれたけど、けっこうな幅だ。
「うわあああああっ!」
恥ずかし過ぎて彼を突き飛ばし、慌てて背を向けてチャックを閉めた。
「さっき下から見上げた時に見えたんだよね。下着、青でしょ」
半泣きで振り返ると、彼は整った微笑を浮かべていた。
「顔真っ赤。そんな風になるんだ。かわいー」
かわ……っ!?
一瞬、言葉の意味が分からなかった。だから尚さらパニックになって、「あっ……」としか言えない。これじゃあ本当にカオナシだ。
「ごめんって謝って拾おうとしたのに、急に逃げ出してさ。意味分からないから追ってきた。このペンここら辺じゃあんま売ってないから持ち逃げされたら困るし」
「ごめっ……いや、そんなの俺には関係ないし! 机が邪魔だったんだからしょうがないだろ! 本当にごめんなさい」
「何そのキャラ……」
彼はますます不審な目付きでこちらを見ていたが、そんなのどうでもよかった。下着を見られて恥ずかしい。だって俺はまだ初体験もしてないのに。
正真正銘童貞だ。だけどそれには理由がある。俺は多分、これまでもこれからも童貞だ。
いたたまれなくて逃げ出そうとしたら、腕を掴まれて簡単に引き寄せられてしまった。彼は身長が高く、俺よりずっと力が強かった。
「何ですぐ逃げんの? 教室じゃあんな堂々としてるのに」
彼の瞳は興味と、獲物を見つけた猛禽のような鋭さが含まれていた。
「だから、関係ないだろ! 離せよ!」
「望」
え、と目を見張った。
久しぶりに呼ばれた名前。思わず見上げると、彼は目を細めて笑った。
太陽みたいに眩い。それにこの表情、俺はどこかで見た気がする。
呆然と立ち尽くしていると、また腰に手が回った。やっぱりこれセクハラだよな。さりげないセクハラ……!
「……離せ!」
つい腕を振り上げ、強い力で突き飛ばしてしまう。それが最悪だった。彼の後ろは段差になっていて、数段だが尻もちをついて倒れてしまったのだ。
ひえええっ!!
「ご、ごめん! 大丈夫!?」
怪我だけは絶対にさせたくないと思ったのに、彼の手のひらは擦りむいてしまっていた。
「ほ、保健室!」
コードブルーと叫びそうな勢いで立ち上がると、彼は「これぐらい平気だよ」と答えた。
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